『TOCKA[タスカー]』(022年/日本/119分)監督:鎌田義孝 出演:金子清文、菜葉菜、佐野弘樹、イトウハルヒ、新井田心咲、小林なるみ、清水祐貴子、
息子が病死したために絶望した妻を殺してしまう(自殺幇助)男の死に様(生き様)を描いて、それに関わる目的を見失ったフリーターの女性と底辺のブラック仕事をする若者のドラマ。その登場人物も面白いが自殺願望の男の死ねなさはベケットの後期の作品を連想する(「消尽したもの」)。
そういえばドゥルーズも最期は自死を選んだのだしゴダールもスイスで自殺幇助を受けている。そういう地位にない男だが絶望した状態から終わりが見えない状態はベケットの喜劇でもあるような映画であった。
たまたま自由律の尾崎放哉の伝記本(伝記が電気と変換された、そうだ彼の伝記だった)を読んでいたのだが、自由律の俳人としてギリギリの生活を送っていながらアル中でどうしようもない放哉が、人々の迷惑になりながら終の住処というべき小豆島で人生を終えていくのにどこか似ていると思ってしまった。放哉が残した自由律の俳句は尊いのだ。
それは絶望した男が一人娘の誕生日に送った白いスケート靴のように。