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師走にて救世主(メシヤ)を探し吉野家へ

『短歌 2022年9月号』

【カラーグラビア】
名湯ものがたり 花巻温泉(岩手)…東 直子
空の歌…今井 聡 選

【巻頭コラム】うたの名言…佐佐木幸綱

【巻頭作品28首】春日真木子・道浦母都子・藤原龍一郎・坂井修一
【巻頭作品10首】雁部貞夫・伊勢方信・久々湊盈子・小黒世茂・前田康子・佐佐木定綱

【特集】ほっこりする歌
【特集】結社賞受賞歌人大競詠
【論考特集】肉体の声(なまみのさけび)――河野裕子第一歌集『森のやうに獣のやうに』刊行50年記念

【作品12首】高貝次郎・小笠原信之・森岡千賀子・下村すみよ・前川登代子・高崎淳子・山中律雄・上村典子
【作品7首】藤本則子・大原清明・桜井園子・立花正人・成田ヱツ子・小澤京子・大塚秀行・上川原緑・さいかち真・天野陽子・中井守恵・千種創一・寺井龍哉

【連載】
かなしみの歌びとたち…坂井修一
ぼくは散文が書けない…山田 航
啄木ごっこ…松村正直
挽歌の華…道浦母都子
フリージアの記…水原紫苑

【連載エッセイ】
歌人解剖 〇〇がスゴい!…内山晶太
うたよみの水源――現代短歌の先駆者を辿る…初谷むい
一葉の記憶 ―私の公募短歌館―…横山未来子
嗜好品のうた…三浦 武
見のがせない秀歌集…宇田川寛之
短歌の底荷…音・翔る
ふるさとの話をしよう 東京…堀井惠子

【歌壇時評】山下雅人・鈴木加成太
【月評】山田富士郎・加藤英彦
【歌集歌書を読む】喜多昭夫・後藤由紀恵
【書評】

【投稿】
角川歌壇…香川哲三・渡 英子・林 和清・大口玲子 選
題詠…梓 志乃 選

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編集後記/次号予告

目次

この号は読みたいたい記事が少ないな。特集が「ほっこりする歌」なんだが、こういう歌にストレスを感じてしまう私の方に欠陥があるのだろう。そもそも「ほっこりする歌」とはなんぞや?まず、そこからだった。

【特集】ほっこりする歌

僕はいかにも幸福なアルバムが嫌いでね。僕が幸福な時、僕はいかにも幸福なアルバムは聴きたくないし、本当に悲しい時は、幸福なアルバムは聴きたくない。だから個人的に、僕の人生には幸福なアルバムの入り込む余地はあまり無いんだ。

デヴィッド・ボウイ 名言集

そんな気分の時にTwitterでデヴィッド・ボウイの言葉が流れてきた。けっこうこれに近いかもしれない。幸福と不幸を明確に白黒付けるつもりはないが、どこかしら完璧なる幸福があったとしてそれに疑問を挟む余地を見出すということだ。
 それは社会全体が幸福ということは有りえず、誰かの犠牲の上での幸福なのではないか?だから最初から幸福を放棄しているのかもしれない。
 無論幸福はそれぞれの人の価値観であり、高級ケーキを食べれば幸福な人もいるし、コンビニで大福を食べれば幸福な人もいるのだ。なんか大福食べたくなってきた。出来ればいちご大福。閑話休題。

【特集】結社賞受賞歌人大競詠

短歌業界も結社で出来ているのかとあらためて感じさせる賞である。ほとんど一般読者には興味外の賞ではあると思う。どう読めばいいのだろう?結社内の短歌の傾向を知ってもし何時に結社に入るとすれば(それは永遠にあり得ないだろうけど)この結社みたいな歌風を感じられるところかな。そんな感じで選びたくなったのは「かりん」かな。でもこれ顔写真いるのかな?怖いオジサンの顔のところは敬遠してしまうよな。

【巻頭作品28首】春日真木子・道浦母都子・藤原龍一郎・坂井修一

興味を引いたのは藤原龍一郎「蝉鳴かぬ夏戦争の終わざる」。

キッチュな言葉とロシアのウクライナ侵攻を詠んだ歌で、こういう歌はありきたりだよな、と思ったのだが不思議と言葉のイメージに捕らわれていく。それで歌人の藤原龍一郎を検索したらちょっと興味が出てきたのだ。

ソンタグ『反解釈』を思い浮かべた。例えば今月号の時評、山下雅人『戦争という「内面」の問われかた」で問題とされる各個人の「内面」がどう今回の戦争と繋がっているのかと問うものであるのだが、そこである程度の共感性を持ってしまえばその先には向かうことがない日本人のあり方。そんなあり方とは逆を詠っている藤原龍一郎の短歌なのだ。

洗脳の夢は朦朧さればとて飲み干したまえアイスカフェラテ

この歌を読んで敢えて解釈をすれば、アイスカフェラテを飲んでいる人物。それはスターバックスかもしれない。そしてパソコンかスマホの液晶を無心に見ている。洗脳されてしまう言葉、例えば「アイスカフェラテ」なんであって、「アイコ」ではない(時代性の言葉だから若者にはもはや通じない)。そうした内面というより表層の世界に置いて、朦朧と「アイスカフェラテ」の氷は溶けてゆく。そして冷房の効いた喫茶店にいて世界情勢を眺めている。

百鬼夜行と遭遇する東京の至福と思え末世の令和

そういう人間と多く出会うのだ。夜の都会でスマホを見ながら歩いている者たち。画面に照らされた顔は百鬼夜行としてないか?

街路樹は都市の怒りを幹にため樹液たぎらせいるか日も夜も

都市の街路樹は自然の樹木の違いは明らかに、そこでは枝を張ることは禁じられ剪定される。大きくなりすぎた樹木は伐採される。最近では根が浮き上がらないように拘束具を付けた樹木もある。それでも都会の美観のために樹木が植えられる。

マンションのロビーに置かれ緑なすフェイクグリーンのフェイクの緑

そういうものに慣らされてきている現実。内面よりも表層世界なのです。

ヤマダ電機の百のテレビにいっせいに緊急空襲警報映る

これも実際にあったことだろう。しかし、その後は平静を装った者たちがまた交差していく。

地下鉄の駅に爆撃 我は走る長きホームを転びながら、走る

これは実際の爆撃があったときのイメージかな。

黄禍論さらば日本に核兵器搭載ミサイル降り来る明日を

繰り返されるニュース。

鬼畜とて教えられしがプー○ンも○近平も金正○も

東京に救世主(メシア)はいるか?吉野家のこの行列に救世主(メシア)はいるか?

なんかね、新興宗教めいたメッセージだけど、そんなのがアルタの電光掲示板に流れていても不思議はない。メシヤが飯屋と気付いたときには笑ってしまうけど。

いつの間にかそう洗脳されている歌なのだ。


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