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オーウェル『1984』のパロディー・ドラマ

『ドイツ1983年』(ドイツ/Amazon Prime Video/2015/全8話)


東西冷戦時代のドイツを描いたTVドラマ。コメディ・ドラマの部類なんで、韓国ドラマ『愛の不時着』に似ている。東ドイツのスパイが西ドイツへ潜入してカルチャーショックを受ける。でも、わりとシリアスな部分もあり、オーウェル『1984』のパロディーだからか、『愛の不時着』よりは社会派ドラマなのである。

シュタージというソ連で言うKGBなんだが、それよりは一般的なスパイ組織(民間人の中に混じっているから誰だかわからない。隣がシュタージだったということはけっこうあったとか)。東ドイツを茶化している部分があり、ドイツの官僚が西側のパソコンを使えなかったりとか笑える。

しかし、その後に暗殺やら監視社会やら笑えない要素も出てくる。今のロシアの政治状況みたいな。ドラマの中の関係性が複雑に錯綜している群像劇だから面白い。一応突然スパイにされた兵隊とその家族。叔母がシュタージュだけど、母は反体制派で、恋人もシュタージュだったり。西側で知り合う兵士の父が軍隊の幹部で、息子が反抗していたり。権力側と反体制側がわかりやすく描かれているが、主人公はどっちつかずという感じで物語が進んでいく。

それは主人公がニュートラルだから感情移入しやすいのかもしれない。最初は間抜けっぽいのだが、次第にスパイらしくなり、最後は英雄的?かも。

あと世相が80年代のポップ・ミュージックが懐かしい。デヴィッド・ボウイとか流れてくる曲の使い方がナイスです。あの世代には懐かしさもあるドラマとなっているのが肝なのかも。

当時エイズがあったり大韓航空撃墜事件があったり、今の状況に似て危機的だったのに全然そんなことは感じてないで自分オンリーで生きてきたのだと思った。今もそうだけど。近頃の若者は政治に関心がないとか言えない。

実際にTV映像とかはあの当時のものだから、レーガンとか出てきたり。ハリウッドのヘボ役者だと言われたが、ここではかなり重要な大統領役がうまいなと思ったりして。

シーズン2(『Deutschland 86』)も観たいが日本ではまだやっていない。


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