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シン・現代詩レッスン50

ボードレール「されど満たされぬまま」

今日はボードレールの「ジャンヌ・デュヴァル詩篇」から。ジャンヌ・デュヴァルはボードレールのミューズ(詩神)となった娼婦で混血の奴隷出身の娼婦と言われるがボードレールが植民地の女王のように崇めたことで知られる。しかし、それはボードレールのフランス語であって彼女の言葉ではなかった。彼女には言葉はなかったのだ。芳香に漂う身体とボードレールの欲望を満たすヴァギナ意外は。

夜のごとく浅黒き、奇怪な女神よ、
麝香と葉巻の入り混じった匂いを放ち、
なにやらオービアの作、熱帯草原 サヴァンナのファウスト、
黒檀色の脇腹をした魔女、ぬばたまの真夜中の子よ、

ボードレール「されど満たされぬまま」くぼたのぞみ訳

ボードレールの詩そのものの淫靡さの世界に、幻惑的な宮殿が打ち立てられる。オービアというはブードゥーということで呪いの歌なのかもしれない。ニーナ・シモンの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」のような。

修羅雪姫

薄明の夜明け前の静寂、白雪よ
白蛇を首に巻き蛇の真紅の舌から滴る血の匂い
吸血の修羅雪は、極悪入道に囲われし白拍子、殿上人を切り捨てし極楽に誘ふ
ぬばたばの闇から浮かぶ白の舞ひ、舞ひ、・・・

やどかりの詩

コンスタンスシアの葡萄酒より、阿片より、ニュイの葡萄酒より、
愛がパヴァーヌを舞う、おまえの口の妙薬が好きだ。
おまえに向かって、ぼくの欲望が隊をなして突き進むとき、
おまえの目は、ぼくの倦怠が渇きをいやす貯水池となる。

ボードレール「されど満たされぬまま」くぼたのぞみ訳

コンスタンスシアの葡萄酒は南アフリカ産のワイン。オランダ人の入植してからフランス支配から作られケープ植民地のワイナリーがあったという。ニュイはブルゴニュー産ワイン。ほとんどここは変えることが出来ないな。出来るとしたら中国産の紹興酒とするぐらいか?

満州の馬賊の紹興酒より、阿片より、花びらの入った酒より、
白雪舞へば、男は倒れ、首が飛ぶ、修羅雪
おまえに向かって、僕のペニスはそそり立ち、返り刃となって意識が飛ぶ。
おまえの目は、赤く射抜くように、僕の倦怠を見抜き、血の貯水池となる。

やどかりの詩

おまえの魂の風穴の、その大きなふたつの黒い目から。
おお、情け容赦なき悪魔よ!そんなに炎を吹きつけないで、
ぼくはおまえを九度も抱ける、黄泉の川 ステュクスではないし、

ボードレール「されど満たされぬまま」くぼたのぞみ訳

目はここで使うんだった。先走った。悪魔は悪鬼だな。なんの化身か?
囚われの「浮舟」は「黒の舟唄」。ボードレールの詩形は十二音節からなるアレクサンドランの四行、四行、三行、三行を並べたソネット。和歌の音韻で代用できるかもしれない、と今更言っても。

夜明けの赤目女は誘ふ、しばしうたたねしばし下層へ
嗚呼!まどろむ光の渦よ、鬼神は鈴のでうたふ
ぼくは舟唄にゆれながら、白雪を四度目に抱き力尽きた

やどかりの詩

今日のイメージはお登紀さん。

嗚呼! それにぼくは、奔放な復讐の女神 メガイラよ、
おまえの寝台の地獄のなかで、おまえの根気をくじき、
窮地へと追いつめてゆく、プロセルピナにはなれやしない!

嗚呼!は漢字の方がいいか。「メガイラ」はウェルギリウス『アエネーイス』に出てくる復讐の女神の一人で「妬む女」の意味。プロセルピナは冥界のハーデスにさらわれて妃となったペルセポネのラテン名だという。この変の神話は『古事記』になってしまうのかな。いまいち『古事記』は得意ではない。やはり『源氏物語』がいいな。浮舟しか思いつかないが、匂宮と薫か。

二人の貴人の間に漂う宇治の川
激流は白雪を転覆させ、
死者の形代と成仏出来ない此岸に
鬼の化身で姿を表す修羅雪
男を窮地に追いつめ、寝首をかき切れ、修羅しゅしゅしゅ

やどかりの歌



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