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日本人には理解しがたい映画

『スパイダーヘッド』(2022/アメリカ/ Netflix)監督ジョセフ・コシンスキー 出演クリス・ヘムズワース/マイルズ・テラー/ジャーニー・スモレット

理想に燃える天才科学者 (クリス・ヘムズワース) が運営する最先端の刑務所で、2人の囚人 (マイルズ・テラー、ジャーニー・スモレット) はそれぞれの過去に向き合いながら絆を深めていく。しかしそこでは、人の感情を操る向精神薬を囚人に投与する実験が重ねられていた...。ザ・ニューヨーカー誌に掲載されたジョージ・ソーンダーズの短編小説を、『トップガン マーヴェリック』『トロン: レガシー』を手掛けたジョセフ・コシンスキー監督が映像化。

オープニングの曲が80年代の懐メロ!なんだっけと考えても暫く答えが出なかったが、スーパートランプ『he Logical Song』だとわかった。

この曲が暗示している輝ける80年代にフィリップ・K・ディック『ユービック』を読んでいた。だから、この映画もディック的なディストピア世界だと予測が付く。

原作がジョージ・ソーンダーズの短編「スパイダーヘッドからの脱出」(『十二月の十日』収録)。翻訳者の岸本佐知子さんのツイートで知ったのだが原作は積読のままだった(まあ、今の季節には合わないな)。

原作は、と映画が違うのは当たり前なんだけど、民間刑務所の薬物実験での受刑者の承認を受ける際が映画ではいい加減だ。まあこの民間刑務所が実験者の経営するものなれば、承認なんて大したことではないのかもしれない。

しかし、映画の中で受刑者が過去の自分の罪悪感から何でも承認してしまう(それが過去の犯した罪の継ぐいないなのだという説明)。映画の方はあまりにも個人経営過ぎる刑務所なんだ。ワンマン社長というような。

そして、最初の犠牲者が出る。そこも事件にならずに隠蔽される。助手がなんでこんな非人間的な実験に協力するのか、被験者の男に咎められる。そういう所がよくわからん。受刑者にそんな権利があるのか?それなら最初から薬物治療受けるなよと思う。刑務所なんだけど刑務所でもないリアリティのなさ。まあ、民間だからなのか?

監督が『トップガン マーヴェリック』の監督だった。それにしては随分なザル映画だ。逃亡するとき、何故かボートが用意されて、それをいきなり運転して逃げてしまうし。それで自由どうのこうのセリフ。まあ、アクションを愉しみ映画なのかな。あまりアクションシーンも大したこともないのだけれど。ディストピア社会映画なんだけど、受刑者の過去とかの話で泣かせる(子供を車の中に放置して殺したとか)。

なによりも愛の力で薬が効かなくなるっていうなんじゃそれ展開。パロディー映画なんだろうな。ラブ注入!というコメディアンがいたけど、そんな宣伝文句が出来そうな映画だった。

真面目に考えると麻薬文化がアメリカにあり、その罪悪感とヒッピが後に起業家に転業するという背景があるのかもしれない。製薬会社の陰謀は『ブレードランナー』にも出てきた。この辺のことは日本ではちっとも問題にされない、ワクチン歓迎社会だから。この映画はますます理解されないだろう。


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