見出し画像

韓国メジャー級世界文学

『こびとが打ち上げた小さなボール』チョ・セヒ (著), 斎藤真理子 (翻訳)( 単行本 – 2016)

都市開発が急速に進むソウルの「こびと」一家をめぐる怒りの物語。刊行から30年、韓国で今も最も読まれる130万部のロングセラー。知られざる世界的名作がついに邦訳。

最初の『メビウスの帯』を読んだけど凄い。「メビウス」の表と裏が行き来する世界。学校の授業から始まって、裏社会のアンタチャブルな都市開発の話、そしてまた教室に戻ってくる。「メビウスの帯」を語る先生は、都市開発を受けた子供じゃないかと密かに思う。

表題作は圧倒された。咆吼したくなるぐらい。連作短編。時間軸は混乱している感じだが。

「こびと」の父親を背負わされた三兄弟(兄、弟、妹)のスティグマ(聖痕)とも言える生存の証。70年代の都市開発で埋もれてしまった記憶。様々な登場人物によって語られる構造も見事である。特に最初の「メビウスの帯」と「クラインの瓶」の不条理さ。最初と最後に登場する新設校?の数学教師の問題、圧倒的な表題作の「こびとが打ち上げられた小さなボール」。こびとの「資本論」か?労働運動の限界とテロリズム。アナーキストか?(2018/04/01)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?