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狼や残(のこ)んの月を駆けゐたり  大道寺将司


映画『狼をさがして』を観た。かつて日本狼は、神として崇められ神道の大神(おおかみ)だったのだが、人神を信仰するようになり、害獣となり、消えていった。その「狼」を名乗った「東アジア反日武装戦線"狼"」というテロ組織(今で言う反社会的勢力)。日本のかつての植民地政策と戦争責任、さらに今の日本の繁栄の裏に潜むアメリカ帝国の傀儡政権である国家主義を問う。彼らが言う「反日」闘争とは?それを韓国の女性監督が追ったドキュメンタリーで興味深い。釜ヶ崎(弱者の労働者と共に韓国人労働者がいた)から北海道へ弱者である労働者を追って、かつての植民地政策で奴隷のように連れてこられた中国や韓国の労働者たち、反抗する彼らは虐殺された。

そしてアイヌモシリもまた日本帝国主義の元で虐げられてきた民族だった。そんなアイヌの土地(アイヌ神話も動物神を崇めていたのと関係あるのかも)である北海道出身者が「東アジア反日武装戦線」には多かったという。

映画は「狼」のメンバーで懲役20年の刑期を終えて出所した浴田由紀子さんを追ったものと、牢獄で亡くなった大道寺将司氏の回想や獄中俳句に触れていく。浴田由紀子さんの支援者の母親とその仲間たちが集い家族となっていく姿に、不幸な(妹が公安に追われて電車に飛び込んだとか)事件を乗り越えていく者たちに女性監督ならではの暖かさが感じられた。

ただ一番感動したのは大道寺将司の獄中で詠まれた俳句だった。自身の身体の軋みと思想の軋みが伝わってくるような祈りの言葉。祈りとして聴こえてしまうのは感傷だからだろうか?BGMが感傷的だったので映画的な相乗効果もあったのだろう。でも、その俳句にどう反歌をつけるべきか?

死者たちに如何にして詫ぶ赤とんぼ 大道寺将司


『狼をさがして』公式ホームページhttp://eaajaf.com/



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