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シン・俳句レッスン33

稲。季語は秋全般。子季語も「稲、富草、粳、糯、稲筵、稲葉、稲穂、粳稲、糯稲、もちごめ、田の実、水影草、稲の秋、稲の波、稲の秀、八束穂、稲の香」と多彩だった。ほとんど分からないが。「稲の香」は稲の花が咲くと酒のような匂いが漂ってくるのだとか。実ってしまう前だった。稲とか都会生活者には難しい題詠だよな。

稲連なり喜び汝蚊帳の外

「汝」の読みに「いまし」という読みがあり位の高い天皇とかの意味の言葉とか先日の詠んだ入沢康夫『詩にかかわる』で出てきたのだがその例題を忘れた。

高篤三(こうとくぞう)

草闘や女には女の匂あり
目つぶりて春を耳噛む処女どうし
六月の海の碧きにクレー射つ
水の秋ローランサンの壁なる絵
白の秋シモオヌ・シオンと病む少女
しろきあききつねのおめんかぶれるこ
バスのはくにほひおふこにさとのあき
薫風に少女は赤き舌を出す
北風の少年マントになつてしまふ
新盆の白き提灯吊りにけり
氷白玉仏間にたうべ帰りけり

「草闘や」の読みを探っていたら「闘草」という言葉があってこれは「五月五日端午の節に摘み草比べ合って遊んだ風俗」とある。それを逆にしたので女の子の遊びという感じなのかな。レズビアンを詠んだ句らしいのだが。

「目つぶりて」はもろそういう句だと思うが、寺山修司の代表作も連想される。

目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹     寺山修司

ただ「つぶりて」と「つむりて」は意味が大きく違うようなのだ。

全体的にメルヘンチックだが、通俗的な感じか。「新盆」と「氷白玉」の句は母の新盆の句だという。
寺山修司が影響を受けていそうな俳人ではあるな。

銃声はゴッホの道の麦畑

麦畑じゃなく稲畑だって!

藤木清子

夏深き蒼空鳶がすべるのみ
針葉のひかり鋭くソーダ水
こめかみを機関車くろく突きぬける
無花果熟れ朝の掃除のひとまぶし
虫の音にまみれて脳が落ちてゐる
戦争の硬き街ゆき雨月なる
あきさめの歌劇生あかくよそほへり
わが心信ぜずあきの雨に向く
秋ふかし故郷捨てむ青年の悩みきく
短日の弔花自動車のうへに萎ゆ

この頃になると日野草城の影響より誓子や篠原鳳作らの新興俳句の影響が強くなるような。

稲たわわ妊婦の散歩しんどいな

稲は難しい。

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