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シン・俳句レッスン85

七福神で俳句は終わったので、今日は何にしようか?地蔵で十句ということか?藤田湘子が毎日十句俳句を作っていたという荒行を真似ることにする。地蔵の俳句は思い浮かばないので、例題を探す。地蔵(菩薩)盆で夏の季語だった。冬のイメージが強かったのは笠地蔵とかかな?

春なれや笠縫邑の笠地蔵  角川春樹

あまり出てこないのだが。やはり地蔵盆で夏のイメージが強い。あと辻地蔵だと冬のイメージかな。

雪かさむかくかくしかじか笠地蔵  宿仮

「かくかくしかじじか」昔話といういことか?

雪かさむ老婆の騙り笠地蔵  宿仮

ちょっと良くなってきたか。

雪かさむ語りの団欒笠地蔵  宿仮

逆だな。

笠地蔵騙り団欒雪深く  宿仮

これがいいだろう。

あと辻地蔵。昔水仙と作ったような気がした。

水仙やお辞儀したのは辻地蔵  宿仮

これも逆か?

辻地蔵水仙咲くや遍路路に  宿仮

イメージ的にはこんな感じか。

辻地蔵花に囲まれ人気(ひとけ)なし  宿仮

難しいから先に進もう。

『俳人風狂列伝』(岩田昌寿)

『俳人風狂列伝』石川桂郎より。岩田昌寿は検索してもこの本が出てきたりして、あまり出てこない。『地の塩』という句集ぐらいか?

社会生活が苦手で一途に一人の女性を愛して人間の欲望のままに生きた俳人だが結核になったり、神経症から精神病院に入れられたり、それが風狂と呼ばれる所以なのだが、波郷の境涯俳句というような(その波郷の主宰誌によって評価された)俳人だった。その出自として芭蕉『おくのほそ道』感化があったという。


俳句いまむかし

坪内稔典『俳句いまむかし ふたたび』から。

まだ眠れさうな気がする朝寝かな  片山由美子

朝寝という感覚がない。だいたい深夜起きていて朝寝する習慣になっていた。そして今起きたのが午後三時だった。今日は雨模様だから、外出は控えたのだ。土曜だし。「朝寝」が季語だった。「春眠」から来ているのか?

春眠をむさぼりて悔なかりけり  久保田万太郎

冬だと冬眠、夏だと夏眠は昼寝っぽい。秋寝はあまり想像が付かない。春眠はやはり朝だった。

笠地蔵冬眠してや転生せず  宿仮

笠地蔵は輪廻転生しないのか?と思った句。地蔵は子供の菩薩だから輪廻転生するのだろう。でも菩薩だから仏になるのか?石地蔵はそのまま風化するだけか。ただの石になるのか?自然に還るのだと考えると仏と言えないこともない。

亀鳴くを聴くは俳人ばかりなり  森潮

他に「ミミズ鳴く」とかあったような。「田螺も鳴く」か?「蚯蚓鳴く」と「蓑虫鳴く」は秋の季語だと。蓑虫はなんとなくわかるが「蚯蚓鳴く」がわからん。オケラの鳴き声と混乱しているということだった。

亀鳴くや笠地蔵から子泣き爺  宿仮

そう思うと子泣きじじいは結構特異なキャラだな。

蓑虫は「ちちよ、ちちよ」と鳴くらしい。

地蔵泣く蓑虫鳴くや父無し子  宿仮

亀鳴くとうつつごころのなかりけり  森澄雄

森潮の父が森澄雄だということだった。「うつつごころ」は現実感という意味。これは使いたい言葉だ。

辻地蔵うつつごころに小銭拝借  宿仮

罰が当たる。でも地蔵とかに上げた小銭とか誰かが管理しているのだろうか?と現実的なことを考えてみる。食べ物だったらのらネコとかの餌になるんだろうけど。乞食坊主が持っていくのかもしれない。山頭火とかそのぐらい貧しい人だったから。

辻地蔵酒はないのか山頭火  宿仮

春の空とあんぱん一つあなたまで  山岡和子

甘党の稔典さんはこういう句には甘いのだった。「あんぱん一つ」の世界が「春の空」と「あなたまで」続いているのだ。幸せ絶頂の甘い句だった。

木漏れ日や地蔵一つと拝む人  宿仮

草に臥て右や左の春の空  岡井省二

「臥て」はねてとフリガナが振ってあるのだが、臥すだと仰向けよりはうつ伏せを連想してしまう。この句は仰向けだと思うのだが、「臥て」はないんじゃないかな。と思ったら寝転がっての意味だという。それなら意味が通るか。難しい俳句だ。

それぞれに歩く川べり蝶の昼  深見けん二

夫婦だろうか?「蝶の昼」が季語。草花に止まっている蝶を昼寝に喩えた季語だった。平和な感じから老夫婦だろうか?作者は当時90代というからそんなところか?

辻地蔵祈り続けて蝶の昼  宿仮

蝶落ちて大音響の結氷期  富澤赤黄男

これ大好きな句。「結氷期」を以前は「氷河期」だと思っていたが、これから氷始める絵が見えてくる。なんだろう、この蝶のイメージが、天使か?というような終末観。

地蔵尊投げ入れ氷砕くかな  宿仮

逆の情景を詠んだのだが。地蔵尊が自ら飛び込む方がいいかな。

地蔵尊飛び込み氷砕くかな  宿仮

風光るさくら第一保育園  二村典子

いかにも子供がいる主婦の作りそうな句だが、だから何?という感じがしてしまうのは子持ちじゃないからか。その差異を強く感じ否定的になってしまう。「風光る」がいかにもだよな。

風光る乳房未だし少女どち  楠本憲吉

こっちの方がまだユーモアがあるが今の時代だとセクハラ気味かもしれない。「どち」ってなんだ?「ども」の古い言い方か?裸の少女が草原にいる感じか?まだ女ではない中性的な。これも天使だな。

NHK俳句

村上鞆彦先生、「悴む」。松田優作の娘がゲストだった。ミュージシャンということだったが、まったく知らない。このへんも世代感落差を感じてしまう。

アーティストって感じだな。

あまり興味が無かった。同じ場所に藤圭子「舟歌」を見つけてしまい聞き入ってしまう。ドスが効いている。この感じは宇多田ヒカルには出せまい。このへんが世代間ギャップなのかもしれない。

夏井家の俳句教室はオノマトペ。地蔵のオノマトペは何かあるか、と考えたら地蔵は無いよな。ただ仏教的漢字でオノマトペに出来ないか?地蔵菩薩

夢々に現れて消えし辻地蔵  宿仮

オノマトペじゃないな。地蔵は難しいから、「しんしんと」みたいな情景のオノマトペか。

しんしんと雪に埋もれし笠地蔵  宿仮

すでに詠まれていそうな句だった。

しんしんと石にしみいる笠地蔵  宿仮

芭蕉のパロディでもないし。ちょっと無理か。

「悴む」

悴むや手を擦り寄せて辻地蔵  宿仮

こんなもんか。今日の十句。

雪嵩むかくかくしかじか笠地蔵
笠地蔵語りだんらん雪深く
辻地蔵水仙咲くや遍路路に
辻地蔵酒はないのか山頭火
地蔵尊飛び込み願ふ砕く心
笠地蔵冬眠してや転生せず
地蔵尊祈り続けて蝶の昼
蓑虫鳴く地蔵も泣くや父無し子
木漏れ日や地蔵一つと拝む人
悴む手をすりすり暖か辻地蔵  宿仮

こんなもんか。


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