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信じられない報告書は昔の話でもない

『アウシュヴィッツ・レポート』(スロバキア・チェコ・ドイツ/2020)監督ペテル・ベブヤク 出演ノエル・ツツォル/ ペテル・オンドレイチカ/ ジョン・ハナー

解説/あらすじ
1944年4月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。遺体の記録係をしているスロバキア人のアルフレートとヴァルターは、日々多くの人々が殺される過酷な収容所の実態を外部に伝えるため脱走を実行した。同じ収容棟の囚人らが何日も寒空の下で立たせられ、執拗な尋問に耐える中、仲間の想いを背負った二人は、なんとか収容所の外に脱走し、ひたすら山林を国境に向けて歩き続けた。奇跡的に救出された二人は、赤十字職員にアウシュヴィッツの信じられない実態を告白し、レポートにまとめた。果たして、彼らの訴えは世界に届き、ホロコーストを止めることができるのかー。

毎年のように「アウシュヴィッツ」映画は公開されるけど、それだけナチスの戦争犯罪を忘れまいとするドイツや周辺諸国の思いが強いのだろう。そして映画も過去の出来事というより、現代の問題として問うている。前回観た『復讐者たち』よりストレートでただ逃亡する映画なのだけどスクリーンから目が離せなかった。

それはホラーにする必要がないほどホラーなんだよな、あの時代は。そして思ったのはアウシュヴィッツ経験者も時代と共に亡くなっているということだ(日本の戦争体験者も亡くなっている)。この映画のモデルとなった人も2000年代まで生きていたのだ。そういう証言者(語り部)がいなくなるからこそ、こういう映画が作られる。エンディングで、ホロコーストは無かったとする発言が紹介された。

その他に現代の各国の極右政治家の演説で締めくくられていたこと。そこにユダヤ人ばかりではなく、知的障害者や、同性愛者、また不労所得をも攻撃されている現実がある。各国が移民を排除し国境の壁を強化する今だからこそ、このような映画が作り続けられる。過去のことではなく現代の問題なのだ!


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