見出し画像

父は繊細母は強し息子は映画監督

『ハイゼ家 百年』2019年/ドイツ、オーストリア映画/ドイツ語/218分/日本語字幕:吉川美奈子/協力:ゲーテ・インスティトゥート
配給:サニーフィルム
解説/あらすじ
遠い未来から家族の遺品を見つめるドイツ百年、全5章218分の家族史。本作品は旧東ドイツ出身の映画監督トーマス・ハイゼの家族が19世紀後半から保管してきた家族の手紙や日記、そして音声記録などの遺品を用い、ハイゼ家が歩んだ激動の百年を自らのモノローグで3時間38分語る驚異的な作品である。二度の大戦、台頭するナチス、ホロコーストの記録、冷戦による東西分断、シュタージによる支配、そしてベルリンの壁崩壊―。自由と民主主義を信じた人々の希望は、冷戦後も続く国家による暴力に打ち砕かれる。80年代初頭から壁の東側でカメラを回し続けた不世出のドキュメンタリストは在りし日の家族と故郷の歴史を叙述する。ベルリンの壁崩壊から30年の年に完成した21世紀映画史に残る大作ドキュメンタリーの日本公開。

名称未設定 4

第一章 祖父の手記は、14歳なのにしっかりした哲学を持っている。さすがドイツっ子と思ったけど途中でうとうと。やっぱ手記だけの映画で3時間超えはキツいかもと思っていたが、ホロコーストで次第に家族が追い詰められていく様子は息を飲むリアリティを感じた。全員いっぺんにというのではなく近所の誰それから始まって父と子供たち。叔母が残されたが次第に追い詰められていく。そして収容所での終戦。

名称未設定 5

ユダヤ人である父の家族に対して母方のほうは、自由奔放というか敗戦でソ連軍が攻めてくる恐ろしさはあるものの、戦後母はモテまくりだった。それでも母は生活するための意識が男どもと違って現実的で利用出来る者は利用しようという考えがあったのかもしれない。結局大学教授の父を選ぶのだったが、母親のヌード写真まで出てくるとは。そのぐらいに活発な女性だったようだが、思想的にはヘミングウェイ『誰がために鐘はなる』に批判的だったりする。

名称未設定 6

第三章はちょっとキツい。父が思想的に共産党と反目していく知識人であったために精神的に追い詰められていく。大学教授の地位を追われて、精神病院に入院することになってしまう。近所にはシュタージの視線を浴びる中で生きていかねばならなかった。そんな中で子供たちの手記で、長男が次男を虐めてしまう心理を語っていた。

名称未設定 7

子供たちの思春期。長男は父の次男は母の性格を受け継いだのかな。行動的な次男の不良時代という感じ。次男がこの映画を撮るのだが。知識人グループとの交流(ブレヒト、ブレヒト劇の演出家ハイナー・ミュラー)とその言葉。そうした交流が後に映画監督になる次男の思想形成に影響を与えたのかもしれない。父親の浮気は、余計だが。

名称未設定 8

ベルリンの壁の崩壊。東ドイツで生きるために母はシュタージの協力者だったという事実。考えなければいけないのは母がスタージュに協力しなければ生活がままならなかったこと。父が反社会的のレッテルをはられて精神病院に行くような生活だから子供たちを守るためにも仕方がなかったのかもしれない。ナチス時代に流れた流行歌。「まっすぐ見て脇目をして考えすぎては駄目」、という歌のプロパガンダ。東独時代にも流れて歴史は繰り返すのだと思った。今の日本と重なる部分もある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?