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シン・俳句レッスン129


ひまわり

さすがに「向日葵」は多くの俳句があった。青いひまわりの句はなかったけど。

黄経一八〇度向日葵老いたるかな 荻原井泉水

サマータイム青いひまわり咲き乱れ 宿仮

「咲き乱れ」は数多くある感じだから、一輪のひまわりにしたい。

一輪の青いひまわり夏時間 宿仮

ジャニスから遠ざかるな。


昭和俳句

川名大『昭和俳句の検証』「昭和俳句表現史(戦前・戦中)」続き
「モダン都市の俳句」

関東大震災後、モダン都市の俳句。

街灯は夜霧にぬれるためにある 渡邊白泉
スケート場沃度丁幾の壜がある 山口誓子

イメージによる内面世界を表現した俳句。

頭の中で白い夏野となつてゐる 高屋窓秋

高屋窓秋のこの句が好きだった。

ひまわりやサマータイムに青く咲く 宿仮

エレベータに女ゐて青い夜を降りてつた 栗林一石路
扇風器大き翼をやすめたり 山口誓子

「誤字」は誤字だろう。器はない。扇風機だろうと思っていたら「扇風器」でもけっこう出ていた。山口誓子は都会派俳句得意だよな。

「ホトトギス」にもモダン都市俳句があった。

ミスミセス籐椅子並べ靴を海へ 小野蕪子

小野蕪子もわけがわからない前衛俳句っぽいのを作っていた時代だった。

橋本夢道の俳句はイメージを超えているな。

煙突の林立静に煙をあげて戦争のおこりそうな朝です  橋本夢道

短歌と言ってもいいぐらいの字余りだった。この時代あまり定型は気にしなかったのか?これは散文だ。

新興俳句運動の勃興

水原秋桜子が「馬酔木」を創刊して「ホトトギス」を離脱する。

来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり  水原秋桜子

「馬酔木」は清新な抒情俳句。そんな中から高屋窓秋の「白」をモチーフとした俳句が生まれた。

白い服で女が香水匂はせる  高屋窓秋

それを受けての篠原鳳作の碧の俳句。

しんしんと肺碧きまで海のたび 篠原雲彦

篠原鳳作は篠原雲彦と名乗っていた。

「ほととぎす」では星野立子と中村汀女の時代。星野立子はモダニズムを感じる。

引いてやる子のぬくき朧かな 中村汀女
娘らのうかうか遊びソーダ水 星野立子

騎士の鞭ふれてこぼるゝライラック スコット沼蘋女

スコット沼蘋女(しょうひんじょ)俳号と俳句のインパクトが強い。

この時期(昭和7・8年)の名句。

くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏・昭和8年
蟾蜍(ひきがえる)長子家去る由もなし 中村草田男・昭和7年

無季新興俳句の成熟

水枕ガバリと寒い海がある 西東三鬼

ひるがおに電流かよひゐはせぬか 東鷹女

三橋鷹女。4Tの時代。

赤き日にさびしき鉄を打ちゆがめ 中台春嶺

プロレタリア俳句。軍国化の中の閉鎖的社会。

銃後といふ不思議な町を丘で見た 渡邊白泉

兵隊が征くまつ黒い汽車に乗り 西東三鬼

「ホトトギス」系の日常詠

青天や白き五瓣の梨の花 原石鼎
冬日柔か冬木柔か何れぞや 高浜虚子

落花生食いつゝ読むや罪と罰 高浜虚子

この句は好きかも。『罪と罰』がいいのか?

香水や時折キツとなる婦人 京極杞陽

京極杞陽は初めて知るが面白い。

昭和12年「愛国行進曲」公募。翌13年国家総動員法。新興俳句系の銃後の戦争句と京大俳句の勃興(昭和14年)。翌15年、京大俳句弾圧事件。

戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡邊白泉

藤木清子の戦火想望俳句(女性では極めてまれ)。

戦死せり三十二枚の歯をそろへ 藤木清子

ひまわりやモノクロだけの菊に似せ 宿仮

NHK俳句

夏井いつきと体当たりで俳句を学ぶ第二弾!今回はお題「木漏れ日」で柴田英嗣、アンジェリーナ1/3、庄司浩平、ペンた丸が作句に挑戦。脱ボンできる俳句は誕生するのか。

今月は第5週が特集だったのか?「夏井いつきの俳句ドリル」というような夏休み特集か?こうすれば入選しやすいみたいな俳句で、疑問に思うところもあったが、ゲームみたいな感じだから面白かったのか。

ただこのゲームはルールは出題者のもので、萬人に共通したものでないと思うのは、季語の選定だった。「木漏れ日」と兼題で出されたら季語だと思うが、これはひっかけ兼題で季語ではなかった。だから季語を足さなければならないということなのだが、例えば「ビール」が夏の季語で「麦の泡」だと季語にならないとか、その選定に納得がいかない。考えてみればビールが夏のものだという発想も秋味にビールとか鍋にビールとかでもいいと思ってしまう。だから季語なんて俳人が勝って決めていくもので、なお時代によって季語も変わるからとあっさり言われたり、歳時記によって季語になったりならなかったりするのは、どう思えばいいのか?歳時記に高い金を払った者が勝ちみたいな。夏井いつきは高い歳時記を勧めるよな、と思ったり。季語は納得いかないことばかりだった。

「木漏れ日」が昼の光だから夜の情景はおかしいというのは納得いかない。対句表現という手法は古からあるのだし、俳句にも対句表現は使われる。

あと詩心という選定は、どこ言葉に詩心を感じるのかは詩人によって共通認識があるわけではなく、例えば糞にも詩心があると思うものもいればないと思うものもいる。今回アンジェリーナ1/3の俳句は面白い徘徊味がある。

ビール呑み
木漏れ日すら避け
なるほどな

私だったらこれを特選にしたかもしれない。何が「なるほどな」なのか謎である。そこに色々な想像の余地があり、この「なるほどな」に詩心を感じてしまうのだった。ただこの句は詩心がないと切り捨てられた。

それで残った句を観るとなんか当たり前のような句ばかりで、こういう選考基準なのかと思ってしまった。

<兼題>堀田季何さん「桃」、西山睦さん「虫」
~7月22日(月) 午後1時 締め切り~

<兼題>木暮陶句郎さん「花野」、高野ムツオさん「座る(坐る)・座す(坐す) 動詞 活用可」
~8月5日(月) 午後1時 締め切り~

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