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ギリシヤ悲劇の魂彷徨う砂漠の映画

『灼熱の魂』監督ドゥニ・ビルヌーブ 出演ルブナ・アザバル/メリッサ・デゾルモー=プーラン/マキシム・ゴーデット/レミー・ジラール

解説/あらすじ
中東系カナダ人女性ナワル・マルワンは、実子である双子の姉弟ジャンヌとシモンにも心を開かず、ずっと世間に背を向けるように生きてきた。そんな母親は、なぞめいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去る。その二通の手紙には、ジャンヌとシモンが存在すら知られていなかった兄と父親に宛てられていた。初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていく――。

coco映画レビュアー

『DUNE/デューン 砂の惑星』『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴの衝撃の出世作と後から知ったのですが、なにげにイラン映画かと思っていました。カナダの監督なんですね。それも中東からの移民の。ここに描かれているのは中東だけどどこの国かわかりにくかったです。レバノンということですが、内乱状態の国です。それもイスラムとキリスト教の対立の構図。社会的な告発映画でもなく、純粋なる戯曲としての映画でギリシア悲劇をモチーフなのがわかります。

ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督としてだけではなく、脚本家として優れているのは、この映画を見ればよくわかります。ただ話の内容は錯綜しているからけっしてわかりやすいストーリーでもない。謎解きものです。

母の遺書を託された双子の兄弟が、兄と父を捜索するというストーリー。その物語で母の悲劇と兄弟がどのようにしてカナダの移民として逃れてきたかが語られるわけです。壮大なストーリー。この映画が元になって、『DUNE/デューン 砂の惑星』『ブレードランナー2049』が作られたのがよくわかる。それはアラブの内戦を経験した移民の子孫の監督なのは、この映画が祖母に捧げられている。なんらかの理由で祖母はカナダに逃れてきた。それを物語化したのがこの映画です。

ただ祖母の歴史そのものではなく、そこにギリシア悲劇の「オイディプス王」の物語を下敷きにしている。その脚本は一般受けするにはけっこう錯綜した物語なので、途中で嫌になる人もいるかもしれない。しかし、最後まで見せられると納得の悲劇なんです。普段こういう悲劇に接してない人は話が出来すぎなこともあるのですが。それがSFとかのエンタメの方向でやりたかった壮大なドラマが監督にはあったのでしょうね。

『DUNE/デューン 砂の惑星』『ブレードランナー2049』の背景にあるものが、この悲劇的映画にはあり、面白いと思いました。


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