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マイ・フェバリット・フリージャズ

Albert Ayler『My Name Is Albert Ayler 』(Debut (Denmark) /1964)

Albert Ayler - tenor saxophone (tracks 3-6), soprano saxophone (track 2), voice (track 1)
Niels Brosted - piano (tracks 2-5)
Niels-Henning Ørsted Pedersen - bass (tracks 2-6)
Ronnie Gardiner - drums (tracks 2-6)


今日は、三島由紀夫の命日というか自決した日で、奇しくもアルバート・アイラーの遺体がイースト・リヴァーで発見された日で命日とされています。自殺だったということですが後から他殺説が流れたのは、まだアイラーの音楽が希望に満ちていたからだと思います。

アイラーのイメージは、中上健次『破壊せよ!とアイラーは言った』に影響され、当時はフリー・ジャズは西欧音楽を破壊することだと捉えられましたが、中上が言いたかったのは、西欧音楽のコード(五線譜の枠)を超えて、根源的なものを見出すということを言いたかったのだと思います。コルトレーンをフォークナーに、アイラーをジョイスに喩えたのです。ジョイスが従来の文法(英語)を超えて神話(ケルト)の根源性を辿ったのと同じです。

アイラーのフリージャズの根源にはスピリチュアルな黒人霊歌が流れています。それがジャズのスタンダードを演奏するときもポリフォニーとして響いてくるのは根源にある黒人霊歌なのです。

なんと言っても「サマータイム」のそれまでの演奏を覆す表現ですね。子守唄で美声で歌われるのを、寝た子を起こすようなビブラートで霊魂を呼び起こすような演奏です。

昔、ジャズが好きになった頃に(正直に書くと中上健次の影響で、音楽よりも文学からジャズに入った)この「サマータイム」が入った当時はデビュー盤とされたアルバムが聴きたくて、ジャズ喫茶でよくリクエストをしてました。当時のジャズ喫茶には落書き帳があって、そこにいろいろ来店記念とかかかったジャズの思い出とか書いていたものです。そこで、このアルバムが好きだけど手に入らないということを書いたら店の人が、海賊盤で「フリー・ジャズ」というタイトルで出ていると教えてくれたのです。

その時の感動みたいなものが、またジャズを好きになるきっかけでもあったし、なんとその店にバイトするまでになってしまいました。このアイラーのアルバムがなければここまでジャズに深入りして聴くこともなかったでしょう。美奈子さん、ありがとう。


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