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映画!映画!なのに、日本の映画館では公開されない

『南京!南京!』(中国-2009年)監督ルー・チュアン 出演リウ・イエ/カオ・ユアンユアン/ファン・ウェイ/マイリー・ウィエイラ/中泉英雄

『南京!南京!』は、陸川監督によって製作された中国映画。日中戦争の南京戦とその後に起こったとされる南京事件を題材にした作品。モノクロで制作されており、南京戦の一連の様子が一日本兵の視点から描かれている。
( ウィキペディア)

毎年ナチス関連のアウシュヴィッツものの映画はひっきりなしに劇場公開されているのに、こういう中国映画は公開されない。暗黙の圧力は右翼による嫌がらせや日本の政治状況の中で映画館側が自主規制しなければならない構造、例えば韓国の監督キム・ミレ『狼をさがして』は、「東アジア武装戦線」の企業テロを描いた作品だが、右翼の街宣妨害で上映できない映画館が出てしまった。その他にも映画『南京1937』でのスクリーン切り裂き事件などで上映できないでいるのだ。

そうした中でAmazonPrimevVideoで『南京!南京!』を観た。劇場公開されなかったが配信で観られるのはいいことだ。序盤は日本軍の南京占領で、それに対して英雄的に戦う中国軍兵士と少年兵の物語。モノクロだがエンタメ映画そのもので、ただ中国映画の底力というかエキストラが凄いのだった。かつての黒澤映画のような。その中で日本軍に鎮圧、虐殺されていく中国兵の無残さをまざまざ見せつけられる。

その後は日本兵の占領下の中で行われる暴虐。略奪やら女・子供に対する民衆に対する暴力、中でも慰安婦の問題。ここで慰安婦に心を寄せる日本兵を登場させ彼の視点を描くことによって、一人の人間としての日本人を描くことに中国国内では賛否両論があったという。その日本人が描かれていることで日本人が観てもある部分は感情移入できるようにはなっている。ただそこに描かれる権力関係(持たざるものと支配しているものの権力)は、注意する必要があるだろう。

映画はドイツ人外交官の『ラーベ日記』を元に民衆への暴力を描いているのだが、そのラーベの通訳の中国人や娘たち。日本人に強姦されないように髪の毛を切るのは、かつての満州から逃げ出した日本人が同じことをしたという事実と重なる。それでもドイツ外交官もやがて南京を出なければならなくなり置き去りにされてしまう民衆のシーンは、アメリカのベトナム撤退を思い出したり、戦争の悲劇はいつの時代も共通項があるのだ。だから繰り返し記憶を呼び覚ますことで、現実に起きている悲劇をも想起する必要があるのだ。例えば、今なお続いているイスラエルによるパレスチナ占領。


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