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光源氏の弓は的を当てることができたのか?

『源氏物語 08 花宴』(翻訳)与謝野晶子(Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第8帖「花宴」。桜の宴が開かれた夜、弘徽殿のほうに行ってみると「朧月夜に似るものぞなき」と歌いながら出てくる女性がいた。源氏は咄嗟に袖を掴み部屋に引き入れ、忘れられない一夜を送る。名前も知らずに別れた女の素性を探ると、右大臣の六の君(朧月夜)らしい。もう会う事は難しいだろうと源氏は悩む。六の君もまた、近く東宮へ入る己の身を悲しみながら、夢のようなあの夜を思い出すのだった。

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巻7「紅葉賀」で対になる「花宴」は春の催し。ここでも光源氏と頭中将の舞いが行われている。光源氏が「春鶯囀」。頭中将が「柳花苑」。鶯は光源氏だろう。昼間の舞いの後は夜の夜這いというパターンか。

禁断の恋の相手の義母である藤壺目当てが朧月夜。ただ朧月夜も只者ではない人であった。天皇の妻と成るべき人で、なんで同じ過ちを繰り返すのかな?それは予定通りなのか。紫式部の思惑としては予定通りなんだろうな。右大臣の娘たちは1から6までというなんかぞんざいな扱いのように感じる。生まれた順番なので1番だからということはないようだ。その6の君というより「朧月夜」というほうが合っているのか。天皇の太陽に比して月である光源氏の相手としてはいいのかもしれない。謎めいているが。

(光源氏)
深き夜のあはれを知るも入る月のおぼろげならぬ契りとぞ思ふ
(光源氏が名前を問う。朧月夜の歌)
うき身世にやがて消えなば尋ねても草の原をば問はじとや思ふ
(光源氏の返歌)
いづれぞ露のやどりを分かむまに小笹が原に風こそ吹け

光源氏、女が忘れられずに詠んだ歌
世に知らぬここちこそすれ有明の月のゆくへを空にまがけて

暫くして弓の試合で右大臣家にいったときに朧月夜だろうと当たりをつけて詠んだ歌。

(光源氏)
あずさ弓いるさの山にまどふかなほの見し月のかげや見ゆると
(朧月夜の返歌)
心いるかたならませばゆみはりの月なき空にまよはましやは

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