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対峙するのは被害者と加害者家族の映画

『対峙』(2021/アメリカ)監督フラン・クランツ 出演リード・バーニー/アン・ダウド/ジェイソン・アイザックス/マーサ・プリンプトン

解説/あらすじ
アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないペリー夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす4人。そして遂に、ペリー夫人の「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける──。

coco映画レビュアー

この映画は面白かった。室内劇で登場人物も中心となるのは4人で夫婦が二組。ただその夫婦は被害者家族と加害者家族という明確な対立軸があるのだ。それもアメリカで起きた無差別銃乱射事件の二人共夫婦の子供ですでに亡くなっている。

子供が起こした事件で、どこまでも和解でいるかというテーマの映画か?というか和解する方法を模索する映画と言えばいいのか。とにかく事件映像はなし、で全て会話劇となっている。演劇的な映画といえばいいのか。

どうみても右翼っぽい見た目の感じの悪そうな(人を見た目で判断してはいけない)夫婦は、加害者家族だろうと思ったら逆だった。その時点で波乱が起こりそうな雰囲気というか緊張感が凄い。

それは話し合いの場所を提供する教会の管理人のおばさんがなんというか能天気な感じで、普通のおばさんなんだが、あなたこれからどういうことをやるか、わかっている?的な弁護士かカウンセラーに態度に出られて何が始まるんだろうと期待感が高まる。まあ、映画を観ようという時点で被害者家族と加害者家族の話し合いだとはわかっているのだが。

この4人の役者が普通っぽいのがいい。そこらにいる(アメリカだけど)普通の片方はちょっとエリートっぽい夫婦で片方はプア・ホワイトのアメリカ人という感じで、綺麗どころやカッコいいおじさんは出て来ない。最初の対面の緊張感からして、ヤバい感じだというのが見えてくるというような。

役者冥利に尽きると思うのだが、ほとんどセリフだけで事件を描いている。事件後の話し合いで当事者の息子たちは死んでいる。加害者の方は自決のようだが。立場が相反するのだが、その中で親であるという共通項を見出してラストの感動に繋がるのだが、これは今までに経験したことがない映画だった。CGや派手なアクションとか一切なし。すべて役者の言葉だけで成り立っている映画なのだ。

これは演劇と言ったほうがいいのかもしれない。学園祭で舞台設定だけ作れば出来そうだ。ただ観客を納得させる演技力を問われるが。また今回の映画の場合、わかりやすいように対立項的に人物を演出していたが、その人物設定もいろいろ変えられる。たとえば日本人だったらこういう結末になるんだろうか?とか。問題提起型の映画でもある。

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