あすなろにもなれない

井上靖(1958)「あすなろ物語」新潮文庫
を読みました。

ひとりの少年の人生が、それぞれの時期にそれぞれの女性との関係を通して描かれているところが好きでした。
タイトルにもなっているあすなろ。「明日は檜になろう」と思いつつも檜にはなれない翌檜と自分を重ねる主人公に、少し苦しい思いをしながら読みました。
思いを寄せていた夫人から「翌檜ですらない」と言われながらも、日々を過ごしていくすがたをみて、わたしも明日を生きねばならないのだなあと現実を突きつけられたようなきもちにもなりました。

自分がかなわないと思っている相手も、自分と同じように思って生きている。ひとはみな翌檜なのかもしれない。そんな、苦しくも救いのような一冊。




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