3月30日「ミクと水没都市」

「ミクと水没都市」というゲームをプレイしました。

水没した都市。圧倒的に荒涼とした、死の景色。けれどどこか美しさを感じます。

もと教会でしょうか、屋根まで海に沈んだ時計塔に、小さなボートで近づく、二人の人影。

若い女性がぐったりした少年を抱きかかえています。母親……いや、まだ10代にみえるこの女性は少年の姉、でしょうか。

あずまやに横たえられた少年の腹部には深い切り傷が。意識を失っているのは、この傷が原因なのでしょう。

姉はミク、弟はタクという名前なようです。アジア人の面影があります。初音ミクさんではありませんが、ツインテールなのは何かの希求なのかもしれません。

水没都市はもうずいぶん前に廃墟となったらしく、人の姿はまったく見えません。それでも昔は人がいた痕跡がわずかに残っています。

それはボートの残骸だったり、
ビルの床がくずれた場所に渡されている細い板きれだったり、
この災害について書き留められたらしい、本だったり、
ビルの上めがけて投下されたであろう、救難物資だったり、です。

ビルの頂上には、もしかしたらまだ手付かずの救難物資が残っているかもしれません。

大けがをしている弟の命を助けるために、清潔な包帯や、消毒薬や、食糧や、燃料や、縫合糸などを求めて、

ミクさんはビルの壁面をよじ登るために、水没した建物の間をボートで疾走するのでした。

言葉は最低限にしか出てこなくて、プレイヤーの解釈にゆだねられているのですが、だいたいそんな感じでミクさんが無限のスタミナでビルクライミングをしまくるゲームです。

ボートを並走するイルカやクジラなどの生き物に、うつりかわる昼夜や天候、どこを切り取っても絵になる背景がよいです。

ポーズ中にカメラを調整できる「撮影モード」があるんですけれどそのモードの名前が「ポストカード」だったり、いいセンスしています。

かつての吊り橋や観覧車、テレビ塔のような廃墟がランドマークとして出てくるのですが、ミクさんは世代的にもうこの建物が健在だった時のことを知らないらしく、見たままの印象で名付けられたりするのが考察しがいがあります。

馬の彫像を見ても、馬という動物を知らなかったり。

ゲームを進めるとさらに、なぜ姉弟がふたりきりでボートで旅をしていたのか。なぜタクは腹に傷を受けているのか。など姉弟の過去が明かされていきます。

さらに地球がどうなったのか、についても少しずつ情報が集まってきます。

言語が失われてしまったのか、絵であらわされているのであまり細かいことはわからないのがもどかしいです。

それでもイルカやクジラたちの体表で奇妙に燐光を放つ斑点や、次第にミクの肌にも汚れのようにはりつく燐光を放つ斑点など、水からやってくる奇妙な病気のようなものが徐々に動物たちを変えていったのを推測できます。

とても雰囲気は良いのですが、集める過去の歴史、が絵物語なので本当に全部コンプリートしてもいまいち真相がわからなくてもどかしいところと、

もうひとつ集めるボートの部品で、ボートが早くなる時間を延ばせる改造ができるんですけれど、ボートを急がせて逃げたり追いかけたりする要素がないので時間短縮くらいにしかならないところと、

ビル登りのパターンがそれほど多くないため、各ビルで毎回やることが似てしまっているところと、

どのビルから攻略してもよい、というシステムのため、ビルにそこまで難易度に差がなくて、ラストダンジョンだからいままでの集大成、とかそういうこともなく淡々と終わってしまう、ところがちょっと残念でした。

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