240423 本を燃やしたい

 家を掃除していたら、母校の保護者および生徒向けに配られる図書カードがでてきた。未使用きっかり2000円分。ありがたい。昔の俺なら1000円は本へ、1000円は金券ショップで金にして買いたいものor貯蓄だった。現金化したその900円くらいでまた本を買うこともあった。100円無駄と思われるかもしれないけど、むしろそこがいいと思っている。なんにでも使える自由な金があってなお新しいものを探す開拓者精神が、自分を元気にしてくれた。

 さて、今ある2,000円。何に使おうか。貧乏暇なし伴侶なし。結構毛だらけ猫灰だらけ。
 阿佐ヶ谷の本屋に入ると、想像より買いたいものが多くて困る。そもそも今は家に積ん読がゴロゴロ転がっているから、もっと絞ってから入店した方が良かったかもしれない。放置が良くないのもわかってるし、読もうという気概もあるんだけど、1日頑張った後に耳以外を動かしたくない。オーディブルに無い読みたい本をいつか読もうと思いながら手をつけられていない、情けなさが去来する。

 結局その日は本を買わなかった。まだ読めていない機龍警察やマルドゥック・アノニマスが家にある。貯めていくばかりで減っていくことのない書架にいつか手をかけなければいけない。タブレットで本を読むのが苦手な自分は、好きな本となんとなく手に残したい本、嫌いな本含めてほぼ全てを紙で置いている。

 いつか捨てなければならない。かつての自分がキャッシュにした900円で買ったつまらない本を。ただそれは、その時に感じた開拓者精神も一緒に捨ててしまいそうな気がしていて、どうにもこうにも手をつけられない。
 幼い頃、本棚だけの部屋がある家に住みたいと言っていた。その頃の自分はきっとなにもかもが上手くいって、人生に誇りと意義を感じられるような立派な人間になっていると想像していたんだろう。

 今の自分は、そんな朗らかな情熱と淡い期待の残り香を嗅ぎながら、意義も分からないまま必死になっている。幼年期に対して裏切りと清算を続けて、人は大人になっていく。

 本燃ゆ

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