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いいキャリアとは


人は老います。だからこそ、僕らはそれを前提としてキャリアを考える必要があります。加齢とともに失われゆくものは多く、その代わりに何を得ていきたいか。今日はそういうお話です。

特に、これから就職を考える学生や、キャリアに思い悩んでいる社会人に読んでもらえると嬉しいです。

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 加齢とともに失われゆく「資源」


まず結論から。いいキャリアとは、加齢とともに失われゆく「資源」を仕事などを通じて「資産」に変化させて蓄積していけることかなと思います。こんな感じです。

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社会で生きていく上で必要なものを初めから満たしている人はいません。自分の資源を費やして身につけていく必要があります。

それでは資源とは何でしょうか? 僕は「自由な時間」「体力」「新鮮な脳みそ」「ピュアな気持ち」の4つだと思います。

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もちろん、50代でもピュアな気持ちを保ち続けている人もいて個人差はありますが、加齢とともにこれらが高まっていくということは稀ですよね。

まずは「自由な時間」。誰しも1日24時間であることは変わりませんが、多くの人はライフイベントなどによって自由に使える時間が減っていきます。家庭を持つようになると、仕事ばかりしているわけにもいかなくなるでしょう。

次に「体力」。35歳を過ぎると如実に落ちていきます。40代になるとガタ落ちです。もう徹夜なんて無理です。僕は5年前(38歳)にそれを感じ、体力で闘うフェーズは終わったことを思い知らされました。

さらには「新鮮な脳みそ」も大切な資源の一つです。20代の頃は実感できないかもしれませんが、残念ながら脳は衰えゆきます。最近、僕は人の名前が出てこないことが増えてきました(なぜかSNSのアイコンはバッチリ思い浮かぶんですけどね)。

さいごは「ピュアな気持ち」。これも物事を進める上でのエネルギーとなることがあります。でも、社会で生きていくといろいろあるじゃないですか。グレーなことともうまく付き合ったり、裏の仕組みを知ってしまったり。そうすると、いつまでもピュアではいられないですよね。


社会に出たばかりの頃は十分にあったこれらの資源は、次第に失われゆきます。いつまでもこれらの資源に頼って闘い続けることはできません。だからこそ、これらを仕事を通じて「資産」に変えていく必要があります。ドラクエ的に言うと、素材を錬成窯に入れて新たな武器をゲットするみたいな感じです。


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 その代わりに得ていきたい「資産」


それでは「資産」とは何でしょうか。ここでは7つに分類してみました。ひとつずつ見ていきましょう。

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まずは、1.専門性 。30代後半ともなると「あなたは何屋ですか?」という社会からの問いかけを感じることも増えるのではないでしょうか。その時に「体力とやる気には自信があります(バーン!)」と言いたい人はあまりいないでしょう。時流にマッチしている限り、研磨してきた武器は強いです。

加えて、磨き上げられた 2.マインドセット は自分の仕事の基礎として支えてくれるものになります。要は心構えのことですね。社会人早期にしていい感じに仕上がっている人も稀にいますが、仕事を通じて鍛えられていくことが多いように感じます。

そして大なり小なりの 3.実績 を残すとともに、それらが自分の 4.信用・評価 として蓄積されていく。こういったものは近年、SNSやメディアなどで可視化しやすくなってきていますので、なかなか誤魔化しは効きません(それでも誤魔化そうとする人はいるので要注意)。

専門性や実績など分かりやすいものがなかったとしても、社内外の 5.人脈 を発揮して生きるということもできます。何屋か分からないけど、人を通じて仕事をうまく進めることができる人いますよね。あれはすごい。

あとはやっぱり 6.お金 も必要です。一定の収入額を超えると、幸福度とは相関しなくなると言われていますが、それまではたくさん欲しいですよね。お金があれば幸せとは言えないかもしれないけど、お金があれば回避できる悲しみというものもあります。

さいごに、やはり 7.いい思い出 は生きていく上で必要なのではないでしょうか。すべての人がバリキャリで生きていけるわけではありませんし、それを目指す必要もないでしょう。

だからこそ、もし何も成し遂げられなくても、あとでふりかえった時に「それでも良かった」と言えるような日々があることが大切だと思います。

あの人たちと働けてよかった。あの仕事は大変だったけど面白かった。こういう思い出がないのは、なんとも空しいものでしょう。

※なお、余談ですが「ブラック企業」というのは、資源が消耗するだけで資産が得られない企業と僕は説明することにしています。そういう会社ありますよね。なので、長時間労働で上司が厳しくても、成長や収入が得られるのであればブラックとは言い難いのではないかと思います。


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 キャリアのタテ軸とヨコ軸


キャリアを考える際のもう一つの観点。キャリアはタテ軸(客観の価値)ヨコ軸(主観の価値)で捉えることもできます。整理すると、このようになります。

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タテ軸は年収や地位・ポジションなどのこと。おもに客観による価値で、市場や会社が決めてくれます。先ほども書きましたが、一定のところまでは欲しいと感じる人が多いのではないでしょうか。

僕も例外ではなく、30代中盤くらいまでは年収がどんどん上がっていくのが楽しかったです。でも、ある時ふと思いました。

たしか37歳の時だと思うのですが、年収1★00万円(+α)で1日13時間労働みたいな生活をしていました。お金はたくさんもらえるけど、時間がぜんぶ(やりがいが感じられづらい)仕事で埋まっていくという状態でした。その時に心が叫びました。「死ぬ時に余るお金のために、どうして自分は生きている時間を使っているんだろう?」と。

これが、僕にとってのタテ軸・ヨコ軸を意識したきっかけでした。その時はタテ軸(客観の価値)は過剰で、ヨコ軸(主観の価値)が満たされていない状態でした。

振り返ってみると、こんな感じだったなと。

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その時、僕は今後のキャリア方針を決めました。それは、とある必要な金額を設定して、それをクリアしている限りはヨコ軸が広がるように働いていこうというものでした。

好きなことを、好きな人たちと、好きなやり方で、好きな時に、好きな場所で。こういう「自由」を大切にして生きていきたいと思うようになりました。


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 キャリアは我慢大会ではない



さいごにひとつお伝えさせてください。キャリアに苦しんでいる人の中には、キャリアを「我慢大会」として捉えてしまっていることが見受けられます。

我慢が必要以上に美徳化されてしまい、規範的コミットメント(組織には従属すべきという、べき論が根底に強くあるタイプのコミットメント)が強くなってしまうというか。ただ、そうなるといろいろと弊害があります。ここでは5つ挙げてみました。

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1. 心身の健康を保てなくなってしまうリスク

これは分かりやすいですよね。動物は危険から逃げるのがデフォルトですが、従順であるように訓練された人間は自分の判断で逃げることがヘタくそです。自分の内なる声は無視してしまいがちですが、ちゃんと自分と対話しましょう。


2. 改善すべき点を見ないようになる

我慢が必要である以上は、多くの場合そこに何か改善すべきことがあるはずなんですよね。特に社内の上位者がこれを放置すると周囲がしんどいです。自分自身もいい仕事をしづらくなります。きわめてよろしくない。

3. 自社内部に最適化されてしまい、市場価値が伸びないリスク

我慢大会が続くと、社内価値は高まっていくかもしれませんが、外に出ようとした際に「我慢してきた自分のキャリア」が大きな問題として自分の前に立ちはだかることがあります。我慢を素直・従順として捉え、実は立ち向かうことを怠けているのであれば、大きなキャリア負債を抱えることになります。

4. 自身のヨコ軸を見失い、次第に主観が弱ってくる

社会から認められること(タテ軸)が嬉しいのは健全なことです。同時に、そういったものを抜きにした際に自分は何が嬉しいかを自分が知っていることも大切です。

主観の価値を、他人や社会は決めてくれません。そのため僕は、自分の主観を自覚し、自分にとっての報酬は何かを自問自答し、主観が錆びつかないように努力しています。今のところ、僕にとってそれは「自由」です。


5. 自分がしてきた我慢を、他人に強いるようになる

自分が若い頃はこれが当たり前だったから、次世代にも同じ苦労をさせるオジさんっているじゃないですか。オバさんもですが。これしんどいですよね。若い頃はそれに違和感を感じながらも、我慢大会に参加しているうちに自分が染まってしまうこともあるよなぁと。

我慢大会している組織では、退職者は「耐えられなくなった落伍者」もしくは「大会参加を拒否した裏切り者」となりがち。そんな組織とは早めに縁を切ったほうがいいんじゃないかなと思います。

「辞める」という言葉に抵抗があるようであれば、「もう付き合ってられない」「お別れする」という言葉で置き換えてみると、自分の意思決定を自分で受け入れやすくなるのではないでしょうか。

もちろん、我慢がすべて不要ということではありません。意味のない我慢(単なる消耗)と、意味のある我慢(その先のゴールに近づくために必要な苦難)とを自分なりに分けて、付き合い方を間違わないようにしたいところです。


さいごに


いろいろ書いてきましたが、さいごにもう一度お伝えしたいことを。

人生は長いです。だからこそ、もし何も成し遂げられなくても、あとでふりかえった時に「それでも良かった」と言えるような日々。これが大切なんじゃないかなと思います。

人は老います。来た道を振り返ることも増えていきます。だからこそ、そういった日々を積み重ねていけるように働いていきたいものです。


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