テレ東シナリオコンテスト投稿「隠しカメラ」


#テレ東シナリオコンテスト

○カメラを持ったジェミ、きいろのいる和室に入ってくる。
ジェミ「ベッドの下に、カメラがあったんだけども、これってきいろの?」
きいろ「(……! 隠したカメラもうバレた! 警戒心が強すぎる……)」
ジェミ「【まくしたてる様に】ねぇ? きいろの? 違うよね? きいろのカメラじゃないよね? だってこんなこときいろがするはずないもんね! 隠し撮りなんてナメた真似、まさか泊まりに来ているきいろがするわけないもんね!」
きいろ「えっと、あの、いやまあ、わた(『私の』を言いかける)」
ジェミ「誰のだか分からないし、売ってくるね」

○和室を出て行くジェミ。
 それを追いかけるきいろ。
 玄関に直行するジェミ。
 追いかけるきいろ。
きいろ「あのっ! ちょっと!」

○無視してそのまま外へ出て行くジェミ。
きいろ「あっ……あれ高かったのに……」

○ふと、玄関の子供用の三輪車や杖に目がいく、きいろ。
きいろ「これらは売らないんだなぁ……」

○トボトボと落ち込みながら、和室へ戻っていくきいろ。
 すると、そこには、きいろの自撮り棒付きのスマホを持って座っているキャン。
 驚くきいろ。
キャン「【すごく楽しそうに】キャンちゃんのユーチューブ・チャンネル! はじまるよっ!」
きいろ「えっ、あの、どうしたんですかっ?」
キャン「私もきいろちゃんみたいに、やっぱりユーチューバーやってみようかなと思って!」
きいろ「いや、でも、それ、私の……」
キャン「まず率直に! この家! どうですかっ? 楽しいですかっ?」
きいろ「(隠しカメラのこと、きっとキャンちゃんも知っているはず……どうしよう……)【精一杯の作り笑顔で】えっと、あの……楽しいです! 憧れです! シェアハウス!」
キャン「思い切ってきいろちゃんも一緒にこのシェアハウスに住んでみるっ?」
きいろ「えぇー! いいんですかー! ホント金欠なんでシェアハウスとか助かりますー! あっ! でも! ユーチューバーとしていろいろやりたいんで、私、協調性無いんで、無理かもーっ! うふふふー!」
キャン「【急にシリアスな声になり】いろいろシェアしようよ」
きいろ「【その声にビクつきながら】えっ、あっ、シェア、はい……」
キャン「【また楽しそうな声に戻り】というわけで! キャンちゃんのユーチューブ・チャンネルでしたー!」
きいろ「えっと、あの、ゲストのきいろでした……」

○急に和室の戸が開き、そこに買い物袋を持ったアクが立っている。
 アク「キャン、遊んでないで。やることやらないと」
キャン「はーい! じゃあね! きいろちゃん!」

○キャンが和室から出て行こうとすると、それを追いかけるように立ち上がるきいろ。
キャン「あっ、きいろちゃん。休んでていいよっ」
きいろ「でも何か買ってきてくれたみたいなんで、私も手伝いしようかなって」
キャン「大丈夫、大丈夫!」

○キャン、きいろを和室に押し戻し、きいろは一応そのまま座る。
 が、キャンが和室から離れた時点ですぐに戸に耳を当て、キャンとアクの会話を探ろうとするきいろ。
きいろ「あんまりよく聞こえないなぁ……」

○台所。
 アクとキャンが会話している。
キャン「あの女、隠しカメラ設置してた、女子部屋に」
 アク「へぇ、それは面白い。思ったより面白い子だね」
キャン「面白がっている場合じゃないでしょ」
 アク「五人も六人も一緒じゃないか」
キャン「……するの?」
 アク「……さぁ?」

○和室にいるきいろ。
きいろ「やっぱりこのユーチューバーの利点を生かして、突撃しちゃおう!」

○和室を出るきいろ。
 台所に向かって走って行く。
 警戒されないように足音はあえて出している。

○台所。
きいろ「きいろが料理の手伝いしに来ました!」
キャン「あら! いいのにーっ!」
 アク「お客様なわけですから、ゆっくり休んでいてもいいんですよっ」
きいろ「いやでも私料理は得意ですから! ……と言っても塩と砂糖を入れ間違えて、バイト、クビになっちゃったんですけどねっ」
 きいろのスマホのカメラに、まな板が写る。料理道具もたくさんある。
 アク「ハハハハ、塩と砂糖を入れ間違えるって本当にあるんですね」
きいろ「ちょっとドジで……でも食材を切ることは得意だったんですからね! 包丁はどこですかっ?」
 キャンとアクに不穏な空気が流れる。
きいろ「あの、包丁……」
 きいろのカメラには包丁やハサミが写らない。
 アク「ボロボロになったので、買い替えようという話になって、今、使える包丁は無いんですよ」
きいろ「えっ、あっ……そうなんですか……」
 きいろのカメラには包丁砥ぎの石が写っている。
キャン「でも大丈夫! ホットケーキの粉をアクが買ってきたから今日はホットケーキパーティだよ!」
きいろ「あっ! ホットケーキっておいしいですよね! そのまま焼いても、レンジでチンすれば蒸しパンになるし、揚げればドーナツに!」
 アク「詳しいですね」
きいろ「食いしん坊なんで! てへへっ! じゃあホット―ケーキなら手伝うこともないですね! 私、和室に戻りますね!」

○和室に戻って一段落つく、きいろ。
きいろ「……包丁が無い……そんなことありえるの?」