コント:ヒーロー初戦
えっ! ヒーロー会、って、前金無いんですかっ! いや! ちょっと!
ちょっと待て! 僕お金が無いから怪人倒す仕事をするっていう話なのに!
前金無きゃ武器買えないじゃないですか! 僕ただのパスタ好きですよ!
ただのパスタ好きが武器ナシでどうやって危険な怪人を倒すんですか!
待って! 女子だからチンコ見えてないだけの短パン履いた係の人!
マジでその短パン、男子だったらチンコ見えてますからね!
……いなくなってしまった……足が速い……さすが、元ヒーロー。
「私、元ヒーローなんで全部知ってます」と言っていただけある。
だからって短パン短すぎだろ、男子だったらチンコ見えるからなぁ。
あるのはこの怪人情報装置だけか、これ、どう見てもキッズ用のスマホだ。
あ、マジでキッズ用のスマホだ、ネットに繋ぐとヤフーきっずに繋がる。
ん? LINEがきた、というかもう普通にLINEだ、アイコン犬だ。
……僕の住んでいる地区の公園に怪人が出現したのか、チャンスだ。
でも武器が何も無いんだよな……仕方ない、ここは創意工夫するか。
まるでパスタを作る時のように、公園の水パスタぐらいの発想で。
一応パスタグッズいっぱい持っていくか、これしか僕には無いから。
はぁ……ホント、僕にはパスタしかないんだ……トホホ……。
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あれが怪人・マフラーマンか、手にもマフラーを巻いてる。
先端を温めたいほうのヤツか? まあいいだろう……って危ない!
待て! 女の子へ触りに行くな! おっ、一旦僕と距離を取った。
走って詰めたらいけるんじゃないか? よし、よしよし……ダメだ、
コイツ、詰めたら詰めただけ逃げる、一定の距離感をキープしやがる。
運動神経は同じくらいか、怪人って普通の成人男性なのか?
確かに首と手にマフラーを巻いてるだけで顔は普通のオジサンだ。
ちょっと長めの短パンを履いているところから察するにチンコケアOKだ。
成人男性と対決ならイケる、よし、一旦隠れて後ろから蹴り作戦だ。
公園の木々を利用して隠れて移動し、このあたりかな! キック!
……あれ? さっきと同じくらいの距離をキープされている……。
どういうことだ、別に女の子がやって来てその人に近付いたわけでもない。
僕も見えていなかったが向こうも見えていなかったはず、
でも全く同じ距離感だ、コイツもしや匂いで察して反応している……?
試しに怪人が見えてない範囲でパスタのトマトソースの蓋を開けてみるか、
なるほど、一瞬反応した、一瞬美味しそうな顔をした、間違いない。
クソっ、コイツがマフラーマンという怪人じゃなかったら、
良いパスタ仲間になってたかもしれないのに……よし、作戦立てて勝つ!
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……今だ! ヒーロー・キック! やった! 当たった! 怪人倒れた!
「コイツ! いつの間に俺の後ろに!」だってぇ?
オマエが匂いに敏感なのは分かった。だから俺は体にバジルを振ったんだ!
パスタ用のバジル粉末を体に振って、匂いを消したんだよ!
おっ、倒れた時に足を挫いたようだな、もう降参するか? ……!
「マフラーは全知全能の布なんだよ!」か、話が通じないな、
こちとら普遍的なパスタなんだよ、冬だけ元気素材には負けないぜ、
まずそのマフラーを傷つけてやるぜ! パスタの乾麺刺し!
やっぱりマフラーを攻撃されると精神的にくるようだな、
畳みかけるぜ! イカ墨パスタソース! ハッハッハ!
綺麗なマフラーを黒に染め上げたぜ! さらにイカくさいだろ?
逃げても無駄だ! 長パスタ鞭で攻撃だ! べチンとな!
用心に茹でてきて正解だったよ、僕のしっかりアルデンテを喰らいな!
……! コイツ! ポケットから別のマフラーを出して嗅ぎ始めた!
体力回復ってことかな? じゃあこうやってから……パスタ鞭で攻撃だ!
フッ、たいして痛そうじゃないと思ってオマエがこのパスタ鞭を
かわさなかったことが運の尽きだよ、
もうオマエのマフラーはワキガの匂いだ。
パスタ鞭に付けたクミンのせいでな!
クミンは量が多いとワキガの匂いになるんだよ! 気を付けろよ!
苦しんでその場に倒れたか……これで御用だ!
パスタの袋を結んで作った縄! パスタの袋は縦長で長さを稼げたからな!
よしっ! 怪人を捕まえた! やったぁ! 何だよ、怪人、
「どうしてそんなに強いんだ?」か……まあな、
あいにく僕にはパスタしかないんだ。フッ、決まった……。