シガーボックスの技を考える(1)

見慣れない技を繰り出して「おやおや?」って思わせたいよね~。ということでシガーボックスの技を考える回。
参考動画を準備したので、これを見ながら解説する形をとる。0から考えるよりもベースからの派生を考える方が簡単なので、ここではひっつけ中抜きをベースとして考えていく。

0. 参考動画とベースの説明

参考動画を貼る。

ちなみにベースとした「ひっつけ中抜き」という技は次のような構造の技である。

  1. 箱を1つ「投げる」(両手)

  2. 両手の箱を「積み」タワーをつくる(両手。今回は左手にタワーをつくったとする)

  3. 落下してきた1の箱を「掴む」(タワーとは逆の手、今回は右手)

  4. テイクアウトする

    1. 2のタワーを「投げる」(タワーの手、今回は左手)

    2. 4-1で投げた箱のうち1つを「掴む」(タワーの手、今回は左手)

  5. 両手の箱で残りの箱を「挟む」(両手)

1. 基礎技術をずらす

一番簡単な派生技の考え方は、基礎技術をずらすことである。基礎技術については前回の記事を参照してほしい。

・1-1. 参考動画 0:00-0:05
2種類のひっつけ中抜きをしているが、ここでは「投げる」をずらしている。中抜きするためにタワーを投げるが、その際に非分離/フラットで投げるパターン、分離/回転で投げるパターンを行っている。

・1-2.  参考動画0:05-0.10
1-1から更に「投げる」をずらしている。1-1がアウターで投げていたのに対し、こちらではインナーで投げている。

・1-3. 参考動画0:12-0:16
「挟む」をずらしている。腕の状態をオープンからクロスに変更。クロスにも左右の手をどちらを上にして組むかでバリエーションをみせている。また、ボディの要素を入れて膝を使って挟むパターンも行っている。

・1-4. 参考動画0:18-0:21
「掴む」をずらしている。1つ目では掴む箱の面を変えており、1-1とは逆の下側から中抜きをしている。2つ目では掌の向きを変えており、掌裏:親指上:内ひねりのパターンを行っている(前回記事 1-4参照)。

・1-5. 参考動画0:21-0:23
「積む」をずらしている。タワーの積み方を変えている。

2. 技の構造をずらす

0 で解説した構造に着目してずらしていく。

・2-1. 参考動画0:23-0:25
中抜き(0 で解説した構造の 4-1 投げる, 4-2 掴む)は 「投げる(フリップ:箱を介して箱を投げる)」に置換できる。

・2-2. 参考動画0:25-0:27
0 で解説した構造の 4, 5 の操作の間に「投げる(トス)」の要素を足すとミルズメスになる。

・2-3. 参考動画0:27-0:29
0 で解説した構造の 4 の操作:テイクアウトにて、掴む箱自体を変える。掴む箱の面を変えることで、テイクアウトが単なる持ち替えのような操作になる。

・2-4. 参考動画0:29-0:31
テイクアウトの後、「維持する/スイング」の要素を足して箱の向きを変える。箱の入れ替わり方は要素足す前と変わらないが、大分見え方が変わる。

・2-5. 参考動画0:10-0:12
順番前後するが、前半の技に戻って解説。ここではタイミングをずらしている。一つ前の技と構造上は同じだが、箱を掴むタイミングを変えることで同じ回転で飛ぶ2箱がみえるようになり見栄えが良くなる。これはリバースレインボーなどに応用できる。
https://youtu.be/7ZodEM9l_6k?t=139
他にも633のハイトス/ロートスをシンクロ/アシンクロで投げ分けてみたりなど工夫の余地は大きい。

・2-6. 参考動画0:31-33
タワーの持ち替え(投げる+掴む)の要素を足している。加えて2-5と同様にタイミングを意識しており、0 で解説した構造3の「掴む」を片手で行うと同時に、もう片方の手でタワーの持ち替えを行っている。このように同時に複数操作することで密度を上げる手法はかなり有用である。持ち替えやフラリッシュ、後で解説する手渡しなどは特に入れ込みやすい。これは箱を投げ上げずにできる技は必要な拍が少ないため。

・2-7. 参考動画0:33-0:35
腕振りの要素を加えている。ここではフェイクぽく使っているが、1-3と組み合わせれば大回転のような見た目をつくることもでき有用。飛んでいる箱の回転方向に合わせて振ると見栄えがいい。

・2-8. 参考動画 0:36-ラスト
手渡しの要素を加えている(タワーからの手渡し中抜きはグレイシアと呼ばれる)。ここでも回転の向き、分離/非分離のパターンがつけられる。

・2-9. 参考動画なし
0 で解説した構造1, 2 を書きはしたが、結局タワーをつくれればいいのでその過程はいくらでもずらす余地がある。中抜きひっつけでタワーをつくってもいいし、2リリースからタワーを作ってもいい。

3. 状態に着目する

3-1. 前提条件となる状態

2-9 で書いたように、0 で解説した構造4,5 の操作をする条件がタワーを維持している状態なのであって、タワーに至るまでの過程は何でもいい。書き方を変えればどんな操作の続きであっても、タワーを片手で維持しもう片手で箱を掴んでいる状態からならいつでも構造4,5 の操作が可能ということになる。こういった条件と操作の結びつきを意識することで既存の技をつなぎ新規性を出すことができる。
例えば両手に箱を1つずつ持っている状態ならば何時でもタワーをつくることができる。例えば3箱のyuスぺは縦分離で空中に2箱が適切な高さで飛び、手元に1箱掴んでいる状態であれば、飛んでいる箱がどうやって投げられたものなのかに関わらず入ることが可能であろう。
大回転は非分離/フラットで飛ぶ2箱と手元の1箱があればできる技である。この状態を無理やり作りだせればホールド状態以外からでも入ることができる。
https://www.youtube.com/watch?v=ht2DOiKHExE

3-2. ループ

過程の状態に着目していると、技の途中で、その技の開始状態に戻れるパターンに気が付く。この時、その技はループできる。ループのパターンは派生を入れ込みやすく、分かりやすく難易度が示せるので良い。過去の事例でいえば、スライド技は単発では古くからあったがJIN君がループさせ始めたことで一気に系統として確立された。こうしたブレイクスルーがまだまだ既存の技の中にも眠っているかもしれない。

3-3. 状態に囚われない

「挟む」は両手に箱を掴んでいることが前提とされる操作だが、腕や足を使うことで箱を掴んでいなくとも行うことができたりする。これは必要な条件を満たさなくとも行える操作があるということだ。こうした観点を持つことでまだ発見されていない繋ぎを発見することができるかもしれない。

4. 発想から派生させる

派生を考えるというところから離れて、簡単に他の発想法を考えてみる。

4-1. ちょっとした技から考える

例えば2箱の面白い動きがないか考えてみる。極論、3箱ホールドから1箱高く投げ上げてその間に考えた2箱の動きをすれば良い。あとはどういった技から入るのがいいか、投げ上げる箱の高さはどれくらいが丁度いいか等と考えていく。
https://youtu.be/cMhV6vAn47Q?t=52

4-2. 最終形から考える

箱を一列に並ばせるという最終形から、そこに入るにはどうやれば綺麗か考えてみる。↓ではカスケードから入ることでパっと形に入るようにしている。箱の掴む位置を調整することで箱の向きを揃えている。
https://youtu.be/cMhV6vAn47Q?t=162

5. さいごに

ここまで派生技の考え方を中心に解説してきた。基礎技術マップを用いるとその組み合わせは膨大で、未だ試されていない組み合わせは沢山あるだろう。これを読んでいるあなたも広大なシガーボックスジャグリングのマッピングを手伝ってくれたら嬉しい。いい技できたら見せてね。
最後に注意だが、マッピングで出てきた派生技の中には難易度の割に見栄えが良くない、努力に見合わない技が沢山あると予想される。動画を撮るとか、他人にみてもらうようにするとかして効率的にやりましょう。


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