応援どころじゃない日々に届くDeNA今永の言葉

 ぶっちゃけ今、他の誰かを応援している場合じゃない。

 とは言いすぎだと思うけれども、今の私は他人からそう見られても仕方がない。体調を崩しがちで働けず、貯金を切り崩す生活。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が訪れ、家族の仕事も減り、家計にも大きく影響が出てしまった。

 言われなくてもステイホームしていたいが、就労訓練のため基本的に平日は外出する必要がある。私が住む埼玉県は、報道されている通り病床数が少なく、多くの感染者が自宅待機を余儀なくされている。自宅待機中に亡くなってしまった人もいる。否が応でも不安や緊張感は高まり、連日腹痛を起こすはめになってしまった。

 私は、野球選手のことを応援している場合なんだろうか。まず、自分の足元に目を向けるべきじゃないのか。選手のアクリルスタンドとか買っている場合なんだろうか(月々の支出に気をつけながら購入しているので、精神衛生を保つためにも少し買うことは許してほしい)。

 だけど私は、今のところ衣食住の心配はそれほどしなくてもいい。今の日本では、ずっとずっといい方。
 不安に怯えながら病と闘う人。心身を危険に晒して働かざるを得ない人。収入の見込みが立たない人。長く続けてきた仕事を辞めることになった人。他人の応援なんかできない、できるわけがない人が、今の日本にはたくさんいる。おそらく、私たちが知るよりも遥かに。

 先日、我らが広報部長兼守護神・山﨑康晃による今永昇太へのインタビュー動画が公開された。

 気の置けない二人による軽快なやりとりに、約30分間ずっとけらけら笑っていた。こんなに何も心配せず笑い続けたのは、久しぶりだったかもしれない。

 そんな楽しい時間のなか、今永の言葉に、すっと真顔になった。

 ヤスアキに「ファンに何を伝えたいか」と問われたときの回答だ。※動画中23:15あたりから

「僕は、みんな頑張ってるし、みんなつらいと思うんで、なんか安易に『前を向きましょう』って……もちろん口で言うのは簡単なんですけど、『頑張りましょう』とか『前を向いていきましょう』とか、安易な気持ちではあんまり言いたくないっていうのが正直あって」

 野球ができないプロ野球選手に何ができるのか。こうやって動画に出て、くすっと笑えるようなことを届けられたらいい、と今永は続ける。

 今永は(もちろんヤスアキも)、常にファンの存在を感じながらマウンドに立ってくれる。ヒーローインタビューでは、ファンの声援に毎回欠かさず感謝する今永。不振に陥った2018年シーズンを振り返って、「200万人のファンに借りをつくってしまった」とまで考えてしまう今永。

 今永も、そして穏やかに微笑んでそれを聞いているヤスアキも、きっと知っている。もはやスポーツどころじゃない日々を送っている人々が、今たくさん存在することを。

「頑張る」「前を向く」、その言葉の重みを常に感じて戦っている人だからこそ、こんなに寄り添ってくれるのだ。

 言うまでもなく、プロ野球選手たちも先の見えない毎日を送っている。いつ開幕するか分からない、むしろ今年開幕できるのだろうかと疑問すら抱いてしまう状況。だけど彼らは、必ずそのときが来ると信じて、今日も野球に向き合っている。

「応援する」だなんて、今の私にはおこがましいのかもしれない。応援を成立させるだけのパワーもないのかもしれない。

 だけど、どんな状況に置かれても戦うことをやめないあなたたちが、私たちの味方をしてくれているって、思い込んでもいいですか? 私たちと一緒に走ってくれていると思って、毎日を過ごしてもいいですか?
 あなたたちがグラウンドに立つ日が訪れたら、私たちも一緒に戦うから。また球場で声援を送れる日のことを考えると、楽しみで楽しみで、泣きそうになるほど嬉しくなってしまうから。