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なぜベイスターズは盗塁が少ないのか

 ベイスターズファンなら、野球中継のたびに実況・解説者が「ベイスターズは盗塁が少ない」と言うのを、耳にタコができるほど聞いていることでしょう。実際、9月6日試合終了時点で、ベイスターズの盗塁数は13とセ・リーグ最少です。

 そもそも盗塁が多ければ、より多く勝てるのか?なぜベイスターズは盗塁が少ないのか?さまざまな疑問が頭をもたげます。

「リスキーでリターンの少ない」盗塁

 まず、盗塁が多ければ多いほど得点につながるのでしょうか。

 セイバーメトリクスの観点では、盗塁の有効性は疑問視されているといいます。

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 この表は、蛭川晧平著「セイバーメトリクス入門」(水曜社)p.53より引用しました。2014年-2018年のNPBの記録をもとに作成された表です。

 まずこの表の得点期待値とは、「特定のアウトカウント・走者状況から、そのイニングの終わりまでに見込まれる平均的な得点数」のことです。その状況における、得点の見込みとも言えます。

「損益分岐点成功率」とは、この成功率を超えると得点期待値が上がる、という盗塁の成功率のことです。

 この表を見ると、どの状況においても盗塁に失敗した場合の損失が大きいことが分かります。盗塁する選手には、高い成功率が求められると言ってよいでしょう。

 よくデータを重視すると言われるラミレス監督が、このことを踏まえて采配を振るっていても不思議ではありません。

今のベイスターズは、限られた選手だけ盗塁できる?

 さて、今季ベイスターズの盗塁状況と、現時点(9月6日試合終了時点)のセリーグの盗塁状況を見てみましょう。

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 これらの表は、こちらのサイトの情報をもとに作成しました。

 ベイスターズの盗塁成功率は、リーグで4位となっています。盗塁企画数そのものが少なく、他球団と単純比較して評価することが難しいのですが、成功率自体はリーグ平均と大きな差はありません。

 ここで一つの仮説が生まれます。「盗塁数が少なくなっているのは、確実な技術を持った選手のみが企画している結果だ」というものです。

「ベイスターズ二軍は盗塁数リーグトップ」が意味するもの

 盗塁数がセ・リーグ最少となっているベイスターズ一軍ですが、二軍は逆に、イースタン・リーグ最多の46を記録しています(9月6日試合終了時点)。

「一軍に確実な盗塁技術を持った選手は多くない。その状況を改善するため、育成の場でもある二軍では若手に積極的に走らせ、盗塁技術を向上させている」。今のベイスターズは、盗塁についてはそのようなスタンスなのではと推測しています。

 8月26日に一軍に昇格した細川成也が、一軍の試合で盗塁を成功させたのも、その成果かもしれません。

まとめ

 データ上では、盗塁は失敗した際のリスクが高い行為です。そのリスクゆえ、ベイスターズ首脳陣も、積極的に選手を走らせようとしていないように見えます。

 ただ、盗塁を確実に行える選手が増えて困ることはありません。そのため失敗もある程度許される二軍の試合では、積極的に選手に盗塁をさせて技術を磨いているのだと考えられます。

 今、二軍にいる若手選手が主力となったときに盗塁は増えるのか、興味深いところです。

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