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#71 夜と朝のあいだ

 昔、「夜と朝のあいだに」という歌があった(ピンときた方は私と同世代?)。夏に早番勤務をしたせいか、それとも単なる歳のせいか、最近よく夜中に目を覚ます。午前1時とか2時とか。休みの日なら起き出して本を読んだりすることもあるが、流石に出勤の日は日中のことを考えて布団の中に留まることになる。すぐにまた眠ってしまうこともあれば、しばらくぼぉ~っとしていることも。2時はまだ夜だけど、4時は何となくもう朝の感じだ。とすると、夜と朝の境目は午前3時辺りにあるのかもしれない。そう言えば「水曜の朝、午前3時」という曲もあったな。
 私は、このおもちゃ箱から鉛の兵隊が動き出しそうな時間帯が好きだ。何となく磁場が緩んで、いろんなものに揺らぎが生まれそうな感じがする。実際、目が覚めて眠れずに横になっていると、いろんな思いが浮かんでは消えていく。その流れをぼんやりと眺めたり追ったりするのは楽しい時間だ。そう言えば、中学の頃初めてノートに言葉を書きつけたのも夜中で、そうしないと頭の中に浮かんでくる言葉がこんがらかりそうだったのだ。机に向かって唸ってもnoteのネタは思いつかないけど、この浮遊時間にアイデアを得ることは多い。実はこの一文もそうなのだけど、鮮やかなイメージも翌朝にはきれいさっぱり忘れているから、その時にキーワードだけでも書き留めておくことが大事だ。
 若い頃は飲んでいたり仕事をしていたり、この時間帯に起きていることも多かった。そんな元気な頃でも、やっぱり深夜2時から4時位の時間帯は特別で、一度寝るかこのまま起きているか判断するタイミングがあるし、起きていると決めてもどこかで揺蕩(タユタ)うような時間帯が訪れて、思いもしなかった言葉がポロリとこぼれたりする。鬼門の方角からとか、鏡と鏡を向かい合わせたその奥からとか、昔からいろいろあるけれど、やってくるのは何も怖いものばかりではないだろう。自分でも忘れていた子供の頃の情景とか、意識的に封をして閉じ込めておいた思いとか、そうした諸々が重力から解き放たれて揺ら揺らと漂ってくるのが夜と朝のあいだなのかもしれない。もしその上映時間が時と共に長くなるのなら、歳をとることもあながち悪いことばかりでもなさそうに思える。
 
 

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