短篇「君を見つけてしまった」8-1/8
⁑ 8-1 ⁑
電車の中で、暗い車窓に今日のいろいろなことを映し出していた。
彼女の話し方、彼女の笑い声、彼女の反応、その一つ一つが不思議に僕を包んだ。けれど、幸福感の隙間にふっと浮かぶのは彼女の語る様々なエピソードの信憑性。
もしかしたら、と僕は唐突に思い当たる。彼女の話は話しているというよりは、むしろ書いているという作業に近いのではないかと。だから文節は長いし、助詞は几帳面に言いなおされる。話のすじが時間を追って変化するのだって、より珍しい話に昇華させるためともい