短編小説「パパの恋人と赤い屋根の家」5/6
◇短編小説をこま切れに?して…これがその5回目です。短編を分ける?伝わるかしら?でもそれが青島ろばの純文気分です。その短編を「異界の標本」としてまとめていきます。
窓枠の向こうの強い力に吸い決まれる。
帰ってきたのだ、と私は思った。何かを一気に超えて古巣のマンションへ戻ってきたのだと。でも、あたりには誰もいなくって、弟やパパやママの姿をさがした。
「気のせいだったんだ。もうこの空間には誰もいないし、何もないんだ」
私はかつてしたようにリビングの窓から赤い屋根の家を仰いだ。