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いつでも麻雀日和11話~幕郎、雀荘デビューする。完~

←11話

ったく。なんであんなガキが雀荘に来るんだよ。さっきも運だけのトップ取られちまったしな。トップ取られるだけなら良いんだが、もたもたしててかったるいっての。これだから素人と打つのは嫌なんだよ。ま、あの蒼理とか言うガキはさっきの6m暗槓や9p放銃を見る限りただの素人だ。この半荘で分からせてやらないとな。

「宮里さん」
「あん?なんだ?」
「相手の手牌を勝手に見るのはご遠慮願います。」
「わーったよ。」

この店はマナーにうるせーな。今度メンバーが粗相したらめっちゃごねてやる。俺が行ってた雀荘は今営業停止になっちまって仕方なくここで打ってるが、ここの客はヌルいしつまらん。それでいてマナーにはうるさい。早く営業再開してくれねーかな。

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よし!絶好の入り目!14567待ち!河は目立っているがこんな河でもあの素人からでも出るだろ。出ないにしてもツモって倍満!60000万点コールドで俺の優勝だ!親倍食らいやがれ!

「リーチ!!」

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「・・・・・・・」
なんだ?下家のメンバーが一発を消すか考えてるな。生意気。ここは圧をかけてやるか。こういう圧が積み重なると萎縮して一発消しとかできなくなったり正常な一打が打てなくなったりする。若いやつにはこれがよく効くんだ。特にメンバー。俺に苦手意識を植え付けることによって、鳴いたら何か言われるんじゃないか。こんな安手であがったら…などと疑心暗鬼になる。麻雀で勝つにはまず相手のメンタルにダメージを与えてやりゃいいんだ。
「おい。早くツモれよ。おせーな。俺の一発を消す気か?」
「あ、はい。すいません…」

「パオーン!!」

「は?」
「あ!失礼!嬉しすぎてついゾウになってしまいました。」
「ああん!?」

「ろぉぉぉ~ん!」

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「すっごいバラバラ!32000の10枚ですぅ~」
「ぶっ殺すぞゴルァ!」
「宮里さん!落ち着いてください!蒼理さんも!そんな煽るようなことしちゃダメです!」
「覚えておけよ…」
「忘れるまで覚えておきますね。」
「この野郎…」

「あ!」

「なんだ!?」
「1本場忘れてました☆300点もくださーい☆」
「くそが!」

ー東2局ー
「つもぉ!4000・8000!」

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「絶対に捲ってやるからな。」
「ぴえーん!子被りしたでござるぅ!」

ー東3局ー
「リーチ!」

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来たなガキ。絶対に追っかけて直撃してやる。

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っしゃ!最高の入り目!369m7p待ちだ!しかもあのガキの河には6pが切ってある。9pはほぼ通る!俺の勝ちだ!
「西山くん。」
「はい。」
「この店にはオープンリーチがあったよな?」
「はい。リーチ棒は2000点必要ですが。」
「オーケー。オープンリーチだああああ!」

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「もしかして、これ見て切りました?」
「ああん?」
「これ、なーんだ?」

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「まさか…」
「ろぉ~ん!9pは絶対持ってると思ったんだよね~。」

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「リー即チートイ~♪」
「お前、6p持ってればタンピン二盃口じゃねぇか!」
「え?だってさっき9pでやられたんで。お礼をしなきゃいけないじゃないですか。」
「ぶっ殺す!」
「あ!ウラウラ☆12000の3枚持って僕のところに参勤交代おなしゃーす☆」
「クソ野郎がぁあああ!」
「宮里さん!暴力はダメです!理由はどうあれ手を出したら出禁にさせていただきます!」
「ああ、そうだな・・・すまん。」

ーラス前ー
東家 井上 16700
南家 幕郎 45200
西家 宮里 8700
北家 田中 29400

「リーチでぇす!」

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このクソガキ!トップ目でもリーチしてきやがって!絶対に直撃してやるからな!俺に化け物手が入っていることも知らずにバカなヤツめ!

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メンチンイーシャンテンだ!ここで直撃を取れればまくれるチャンスだ!もってこいいいいい!!!

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こんなところが入るか!4m切って2536m待ちだが、147mが7枚持ち…4mは超危険牌だ。ここは1mを切って36mに・・・受けるわけねーだろおおお!
「オープンリーチだああああ!」

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「うわぁぁぁ・・・いい待ちだなぁ・・・」
よっしゃ!通った!あのガキは3m9mと切っている!36mは掴んだら切る!ド高め6m切りやがれ!

「うわぁぁぁぁ!!!即でつかんじゃったぁぁぁ!!」

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「ろぉ・・・・」

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「自分で引っかかっちゃったぁ☆」
「このやろおおお!」
「宮里さん!」
「あ、ああ。分かってるよ。」

ーオーラスー
東家 幕郎 59200
南家 宮里 3700
西家 田中 26400
北家 井上 10700

ちくしょう。この半荘はもう無理だ。役満をツモっても届かない。こうなったら次の半荘で狙い撃ちしてやる。
宮里1巡目

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お?なんだこれ。四暗刻じゃねぇか!いきなり2暗刻できてイーシャンテン!これなら捲れはしないがチップで一撃食らわせれるぞ!

ー6巡目ー
井上、打西

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こんな西鳴くわけねーだろ!スルーだ!スルー!絶対四暗刻ツモってやる!

ー8巡目ー
田中打、赤5s

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ぐ、ポンすれば中・トイトイ・ドラ5の倍満だが、こんな倍満上がってどうする。あのガキを喜ばすだけだ。そんなことは絶対にさせない。俺をなめたこと、後悔させてやる。てんぱれええええ!

ー13巡目ー

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きたぜええええ!

「リーチだァァァァ!!!」

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「拙者、このまま昼寝をしていればトップでござるぅw」
フッ・・・アガった牌姿見て腰抜かすんじゃねぇぞガキ!てめえはトップかもしれないがチップで捲くってやる。さっきの国士直撃されてもプラスだ!

田中、打5p

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は?メンバーの田中だったか?一発ですげえ牌を切ってきやがった。テンパってるのか?それにしても一発でそんな牌は・・・

まさか・・・自分の手に夢中で全く見ていなかったが・・・あれは国士・・・

田中、無筋

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これはやばいぞ。テンパイ、最低でもイーシャンテンだ。一発であんなドラを打っているぐらいだから相当やばい。こっちは一枚切れの5sと西待ち。西は田中が持ってるとして5sが山に1枚・・・。しまった。熱くなりすぎて全く見てなかった。么九牌持ってくるな!

宮里、打北

セーフ

くそっ!心臓に悪い。么九牌にこんなにビビるなんて

田中、無筋

こんなとこも切ってくるなんてな・・・

宮里、打1p

やばい・・・

セーフ

この無筋連打、テンパイに違いない・・・もう上がれなくてもいい!流局だ!流局!

17巡目
井上
「槓です!」

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ナイスだ!海底消しの槓!これで俺はもうツモらなくて済む!あぶねぇあぶねぇ!1半荘に国士2回も放銃なんて、あのガキを相当喜ばせちまう。
井上、打安牌

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「・・・・」

ああん?あのガキ何を考えてる。そのまま安牌切ってトップだろうが。

「おい、早くツモって切れよ。お前がトップだ。」

「・・・・・・・・・」

「これが最後の牌だ!とっととツモれ!焦らして煽ってんのか!?ああ!?」

「チーですぅwwwww」

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「はぁ?意味ないだろ!何のためだ!」

「いいから早くツモってくださいよ。人をさんざん急かして自分は遅延行為ですか?大人って嫌ですねぇ~」

「くっ・・・」

あの野郎、俺に海底回して国士に振り込ませる気だ。だがな、そんなにうまく行くわけないんだ。国士の当たり牌が海底にいることなんてそうそうあるわけない。俺のアガリ牌もいるかも知れないしな。海底回したことを死ぬほど後悔させてやる!ツモれ!

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槓できない。できたとしても槍槓される。

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「ろ、ロンです。32000の10枚です・・・」

「ありゃ~!しまったぁ!まくられちゃったぁ!国士だなんて全く気づかなかったぁ☆」

「死ね!くそがぁ!」
ボコッ!
「ぐはぁ!」

しまった!つい手が出てしまった!

「宮里さん!いかなる理由があっても暴力はダメです!今後一切の入店を禁止させていただきます!」

「いや、だってこいつが!」
「先に高圧的な態度をとったり、相手を挑発したのは宮里さんです。そして先に手を出したのも。負けた金額を払っていただき退店をおねがいします。」


「おとといきやがれ!まっ!出禁だからこれないな!」

*************

「なぁははははははははははははははは!!!!最高!最高だよ幕郎!」

雀荘デビュー戦が終わり、ファミレスでシロと飯を食っている。

「あのなぁ、知り合いに頼んでカメラ通話で様子見てるとかなんなんだよ。」
「いやぁ、すまん。どうしてもお前のソロデビューが見たくて仕込んでおいたんだ。」
「なんかムカつく。」
「しっかしお前、よくあんな怖い人にあんな事できたよなぁ。」
「俺はムカつかされたとき、俺よりムカつかせないと嫌なんだ。」
「西山さんもめっちゃ困ってたなwwww」
「しらん。俺は悪くない。あっちから仕掛けてきたんだ。」
「たしかに。悪いのはあっち。」
「しかも殴られたし。いてぇし。」
「あの宮里って人、結構嫌われてたみたいよ。」
「へぇ。」
「あの人のせいで来なくなっちゃった人とか多いみたい。」
「あんな奴と打ちたい人なんていないよなぁ。」
「でもお前のおかげで戻ってくるかもな!」
「俺には関係ないけどな。」
「しっかし、あのチーはまじで笑ったぞw自分のトップを犠牲にして振り込ませたんだからなぁ。」
「いやぁ、メンバーの田中さんが絶対国士テンパってるし、宮里がなんかビビって切ってるし。その仕草で待ちがクソ待ちって分かったから、海底回してやろうって思って。もし当たり牌掴まなくても、そのチーでムカつかせることはできるし。」
「ほんと天才だな。」
「最強も抜けてるぞ。」
「最強のくせにあのあとフルボッコにされてたけどなw」
「フルボッコではない。ー3000円だ。場代でトントンだ。」
「出たーw場代を換算して負けてないアピ!それ恥ずかしいからやめとけよw」
「うるせー!今日はお前のおごりだ!俺をハメたバツだ!」
「ハメてはいないが、いいもんを見せてもらったからおごってもいいだろう」
「すいませ~ん!こっからここまで全部くださーい!」
「おいいいいいいい!!!!高い高い!それは見学料にしては高すぎる!」
「うるせい!」


「ところで幕郎」
「ん?最強だが?」
「楽しかったか?」
「まあまあかな。また行くわ。」

おしまい

幕郎、麻雀大会に出場する編に続く

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