(詩)夜明けのカルーセル

降り積もる雪

カルーセルの屋根に
降り積もった雪を
カルーセルは吹き飛ばさずに

カルーセルは
じっと抱きしめながら回る
雪がとけるまで
雪がとけて
雨になって
カルーセルの屋根を
濡らしながら落ちてゆくまで


降り積もる夜

カルーセルの屋根に
都会の夜の欠片降り積もる
こわばった大人たちのため息が
恋に破れた女の子の泣き顔が
降り積もって

都会の夜のカルーセルは
いつも
静かに止まったままでいる
止まったままでいてくれる
X'masにひとりぼっちでも
たいしたことないさ、と
笑っている


降り積もる笑い声

カルーセルの屋根に
子どもたちの笑い声
降り積もって

大人になった
子どもたちは忘れても
笑った記憶を忘れても

カルーセルは覚えている

子どもたちの笑い声
忘れるために
しずかに少しずつ
忘れてゆくために
そして今日も
カルーセルは、回っている


降り積もる、そんな
カルーセルの屋根に
ぼくは
きみの笑い声を
忘れて、きてしまった

回る回る、人知れず
回る夜明けのカルーセル
見ていると
子どもたちの
笑い声にまじって

きみの笑い声が
聴こえてきた
忘れたはずの
きみの笑い声も
聴こえた気がしたから

きみはもう
立派な大人の人なのにね

だからぼくは
泣くことも笑うことも
どっちもできずに
ただじっと見ていた

夜明けのカルーセル

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