ムーミン谷

その少女は
人とおしゃべりするのが
苦手で
だから誰も
その少女のことを
よく知らなかった

休み時間になっても
遊びの仲間に入ることなく
じっとひとり
机にすわったままだった

そんな少女のノートには
いつもムーミン谷の
落書きがいっぱい
書かれていた

ある日ふと
突然少女はいなくなり

少女の机には花が飾られ
何人かの女子生徒が
泣いたけれど

その時壁に貼られた
少女の最後の絵が
風に揺れたので

ぼくは、ふと
彼女はムーミン谷に
出かけていったのだと
おもった

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