(詩)花とぼくと音楽と

ミニーリパートンの
「ラビングユー」を聴いた夏

ひとりぼっちの
ぼくの部屋に
花瓶にさした
一輪の花が咲いていた

まさか、まさか、と
ぼくは自分に問いかけた
まさか、
そんなはずはない、と

けれど確かに
歌を聴きながら
花は、笑った

うれしそうに、にこにこ
気持ちよさそうに
「その曲、気に入りましてよ
 わたしがここにいる間
 いつも
 聴かせて下さいませね」

花が咲いてる間
ぼくは毎日
レコード盤が
すりきれるまで
「ラビングユー」を
掛けて上げた

「わたしたちだって
 水だけを食べて
 生きているのでは
 ございません」

夏だというのに
花は枯れることなく
何日も何日も
咲きつづけた

そしてもう
最後という日
好きな歌を聴きながら

「この曲を忘れることは
 ないでしょう

 いつかまたわたしが
 この星のどこか遠い
 あなたの知らない
 街で咲く時

 もしもこの曲を
 耳にすることが
 あったなら

 わたしはすぐに
 あなたを
 思い出すでしょう」

そして、花は枯れた
お礼のお辞儀をしながら
静かに枯れてゆきました


ミニーリパートンの
「ラビングユー」を聴いた夏

この曲を聴くたび
いつも思い出す
一輪の花がある

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