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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2024年5月の記事一覧

(詩)立夏の前に

一本の桜の木に恋をした 桜吹雪の中で恋をした かなしい結末になると 分かっていて それでも 一本の桜の木に恋をした 少年のように きみに恋をした 花を失くした後 きみは 恥ずかしそうに俯いて 「きみはもう  わたしのこと  愛してはくれないよね……」 春が終わる時 春の終わりは 立夏の前の風の中で 葉桜の木漏れ陽にまぎれ 一枚の桜の花びらに 恋をした少年のように 泣きたい

(詩)四季

春、五月の或る日 わたしはこの地上に やって来たらしい その日晴れていたか 雨が降っていたか それを知る人は もうだあれもいません 降っても晴れても わたしという命に 変わりはない わたしという人生は よろこびとかなしみに満ちて 無我夢中で生きた そんなわたしにも やがてこの地上から 去りゆく時はやって来る わたしの最後の日 それでもやっぱり わたしは最後の日にも 詩を書き 歌を唄うだろう 一番最後の ひと鼓動、ひと呼吸の その瞬間にも わたしは わたしという 命が

(詩)ルネサンス

世の中にはね 幸福になってしまうことで ひとりでいる時の さびしさを忘れてしまうよりは ずっとひとりでいることを 選ぶ人もいるんだよ 世の中は不思議なもので そんな人にも そんな人なりのよろこびは 訪れるものらしい だから この世界に生きる誰かの さびしさや苦しさが わからなくなってしまうというのなら 幸福と呼ばれるものも あんがいそんなに いいことでもなさそうだ もしも幸福になる順番が 人に決まっているというのなら かみさま わたしはいちばん最後でいい すべて

(詩)母の日には

母の日には 部屋の窓辺に 赤いカーネーションの 一輪挿しを飾り 窓を開け 風に吹かれよう カーネーションが 五月の風に揺れ あたかも おかあさん、 あなたがわたしに 笑い掛けて くれているかのように この星の 大地に、海に そして夜になれば 遠い銀河の中に 今はもう 眠るあなたのために 今は夢見る少女のように 眠るあなたが くすくすっと わたしに 笑い掛けてくれるように 五月の窓辺に 一輪の赤い カーネーションを飾ろう

(詩)やがて失われるこの世界のために

ええ、電車また人身事故? はあ、まいったね、まったく えっ、政治家が汚職ってか そんなん、いつものこったろ そのくせ俺たちには 増税、増税、消費税上げますよってか 何、ホスト狂いのねえちゃんが立ちんぼで ガールズバーのお姉さんは ストーカーに殺されたって あゝまったく狂ってんな この世の中、こんな世の中 まったくいかれた下らねえ うそっぱちの世界 WHOも国連も裏の顔は悪の手先 今日もうそっぱちの戦争で 子どもたちが殺され 人身と臓器が売買されている 海は汚染され、作物の種

(詩)この空の下で

何度も躓きながら よちよち歩きでも やっと歩けるようになった時の 何度もふらつきながら やっと自転車に乗れた時の 空の青さはまぶしかった 何度も何度も 死にたいと思ったはずなのに 今こうして生きているのは どうしてだろう よちよち歩きの時も 自転車の練習をしている時も 本当はひとりぼっちじゃなくて 死にたい時も 本当はひとりぼっちじゃなくて たとえば空の青さが ちゃんと見ていてくれたように よちよち歩きの時も 自転車の練習の時も 本当は自分の力で 出来るようになったんじ

(詩)いつかわたしが死ぬ時

わたしがいつか 死んでゆく時は 流星のように落ちてゆきたい あんなふうに 消えてゆけたらいいなあ さーっと 一瞬のうちに跡形もなく 重い荷も罪も残すことなく まっ直ぐな光を放ちながら そしてその姿を見た 子どもたちが 夢や願いを一生懸命 唱えてくれるように 少しでもその清らかな 夢と願いが叶うように やがてわたしが 死んでゆく時は 野の花のように 潔く散ってゆきたい そんなふうに 去ってゆけたらいいなあ 或る日一陣の風が吹いて来て そのやさしき風に吹かれながら

(詩)雨粒かくれんぼ

さっきまで雨の一粒だった水が ぽっちゃーんと川に落ちて プクプク、ぷくぷく 川の中にかくれんぼ 川は海へと流れ 海の水はキラキラと 太陽に照らされ天に昇る 「こんにちは」 隠れていた一粒の水は わたしの目から落ちてきた かくれんぼ、おしまい