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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2023年6月の記事一覧

夜の国道

昼間あんなに車のゆきかった 国道をもう今は 想い出したようにときより ヘッドライトが通りすぎてゆくだけ それにしてもそれは アスファルトの道路に 押し寄せては引いてゆく 波のかけらのようでしかない ラッシュどきあんなに人で あふれかえった駅のプラットホームも 今は電気をおとし エアポートに帰郷した 夜間飛行の旅客機も 傷ついた翼いたわる鳥のように ゆっくりとたたずんでいる 耳をすませば路地裏に ひざをかかえねむる 野良猫たちの寝息さえ 聴こえてきそうなほど 目を閉じ

大地に耳をあて

誰かが言っていた 遺伝子を組み替えられた花は うたわないと 誰かが言っていた クローンは、うたわないと 誰かが言っていた ほんとうかどうかは わからない けれどもう一度 耳をすましてごらん 大地の中に突っ立って そして風に吹かれながら 大地、大陸 この星のまん中で ひとりぼっちで 大地に耳をあて ほんとうに 花はうたっているか 花はうたっていたか やがてこの星がすべて 遺伝子を組み替えられた 作物と植物とで おおいつくされる時 ぼくたちは うたうことが、できる

オオカミ少女

それまでオオカミに育てられた少女は オオカミの世界のテレパシーを使って 意思を伝達していた だから少女に 言葉はいらなかった オオカミたちの世界観の中で 生きること、存在すること そして世界から去ってゆくことの その生命の永遠を学んだ少女は 涙を知らなかった その後少女は人間に発見され 人の中で育てられるようになった 少女はそして 言葉と涙をおぼえた テレパシーと永遠を失った少女は 仕方なく言葉と涙をおぼえた テレパシーを交し合う相手を失い 言葉しか使えない人間を相

花束

どんなきれいな花束より あなたの「さようなら」のひと言が わたしには一番の花束です 花はすぐに枯れてしまうけど あなたの「さようなら」は わたしの中で 永遠に咲いているから ありがとう 好きになってくれて ありがとう 「さようなら」と 泣いてくれて、ありがとう

(詩)雪の夜の約束

ぼくはきみを花と呼んだ きみはぼくを風と呼んだ 直ぐに何処かへ 行ってしまうから でも本当は 太陽と星になりたかった 昼は太陽になり 夜は星になり この世界中を照らすんだ ずっといつまでも きみと一緒に 泣き虫のきみは雨 じゃポーカーフェースの ぼくは砂漠? それより海へ行こう きみが海で ぼくが砂浜 そしていつも きみの涙を受け止める きみの歌声を聴いている 雪が積もった冬の夜は 震えるきみを抱き締める 何処へも行かず ずっときみのそばにいるよ、と いつまでも きみ