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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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2023年3月の記事一覧

(詩)リヤカーでお引っ越し

リヤカーでお引っ越し 引っ越しなら、春がいい ご近所に 六畳二間の家が見付かって 四畳半一間から引っ越した リヤカーで家財道具一式 無事運び終えたら いつも四畳半の 畳の上でひとりぼっち 膝抱え見ていたあの夢も 忘れることなく 空っぽのリヤカーに載せよう そしてゆっくりゆっくり 歩いてゆこう どこまでも どこまでも歩いてゆこう 昔リヤカーで引っ越しした 引っ越しならやっぱり 春がいい ぽかぽか陽気の春の日がいい 古びたリヤカーの荷台には きらきらと 夢と春の陽のきら

(詩)夕焼け雲

寂れた港町の 日暮れの中を歩きながら 今日も一日年老いてゆく 空には夕暮れの雲 あの雲の連なりの向こうに あの夕焼けの彼方に 今も少年の日のわたしが 待っている気がしてならない 誰かを待って 放課後にひとり取り残された 教室の隅で 今ひざ抱え あの夕暮れの雲を見ている 少年のわたしは 今こうして 寂れた港町の日暮れの中で しずかに年老いてゆく わたしのことを 今ひざ抱え、少年のきみは こんなわたしをやさしく そっと許してくれるだろうか ほほにつたう涙に 夕映えをにじま