青の車窓

青の車窓といいます。小説を書いている友人ができたことがきっかけです。目標はとにかく満足…

青の車窓

青の車窓といいます。小説を書いている友人ができたことがきっかけです。目標はとにかく満足のいく小説を一本書き上げて数名にでも読んでいただくことです。が、当面の目標は楽しく続けることです。

最近の記事

ゆさぶる

 パイナップルの匂いが殴りかかってきた。それも生暖かい。すごい!  鼻の奥で膨らみ続ける香りがあっという間に有の身体中を侵食し、脳みそまで揺らしている。外側からも生暖かくしっとりした風、目を刺激する光はさっき見た窓越しよりももっとリアルなオレンジだ。  全部が新しい。その衝撃をしっかり全身で受け止め、一つの情報も刺激も逃すまいと身体中がアンテナになっているのが自分でもわかる。ついに来たんだ。タイの全てを細胞に刻み込みながら、有はもう一歩踏み出した。  私にとってはじめての海

    • 海と炭酸

       海の思い出と問うと日本人の答えはこの二種類に大別できる。  ①ハッピーでカラフルでパワフルな思い出。友達や家族と笑い合ったひととき。海水浴、バーベキューに花火、歌って肩を組んだ一枚の写真、ヒリヒリとしみるシャワーと満足そうな寝顔なんかがそれに当たる。  もうひとつはこちら。  ②センシティブでセンチメンタルなキラキラした思い出。甘美でちょっと甘酸っぱいのが特徴。名前をつけて隠しフォルダに保存するタイプのもの。恋人あるいはそうなる前の人との会話、目の前に輝く海とそこに投

      • ゆびさき

         「あれ、見える?」  「いや、見えないね。どれ?」  「私の指先。」  小さな頃から先を見つめることが好きだった。先というのは未来とかそういうことじゃなくて、もっと実際の先。トンネルの先や路地の先はもちろん、枝の先も線路の先も雲の先も。どこまで見えるかなーって、もっと先まで見たいなーって、自然とそうしてた。もちろん実際には見えるわけじゃないんだけど、けど私には見える、ことがある。今だってほら、ねえみて。私の指の先。 初めまして。青の車窓といいます。 小説は人並みに読んで