今日も雨

歳月は敵に回すより味方につけた方がいい

「情熱大陸」鈴木保奈美


自宅療養92日目。5:50起床。今日も雨かと心の中で呟く。倉橋ヨエコ『今日も雨』の一部を口ずさむ。待ち人が来るかもわからないが、雨の中、勇気を出して飛び出していく。やっぱりいなくて泣いちゃって、でも泣き止んでみたけど、雨はもっと激しくなっている。弱り目に祟り目だけど、人生なんてそんなもんだろう。みたいな歌。昨日の今日で役所に行く気になれず、今日も家に篭ることにする。映画の一本でも観る気分になれれば御の字で。

リハビリをするとやる事が無い。いや、やるべき事はあるのだろうが、意識がそちらに向かわず、シャッターを下ろしたままで、開く気配が無い。店を開けないということは、一日の中に流れができないということだ。時間が経つごとに不毛な感情だけが溜まっていくはずで、その沈殿物は澱となって汚泥化していく。積み重なった泥を掻き出す作業を想像するが途方に暮れるだけだ。

「情熱大陸」を観る。今回は鈴木保奈美。言わずと知れた有名人で作品も多々ある。年代的にも自分の少し上なので、リアルタイムで作品を観てきた。個人的には目の存在感が素晴らしい。すっと力を抜いてフラットな表情になった時の、人間味全てが消えるような雰囲気。怒りや喜びの表現も、目がハンドルを握ってるような。

一番好きな作品は映画『Lie Lie Lie』。原作は中島らも『永遠も半ばを過ぎて』、監督は中原俊。佐藤浩市、豊川悦司、鈴木保奈美いずれも30代の時の作品。主題歌はボニーピンクで、彼女の中で一番好きな曲。全てが幸福な出会いを果たした稀有な映画。トヨエツの詐欺師っぷりも、佐藤浩市の泥臭い思念も、ある中の鈴木保奈美も、三者三様で完璧だったな。

ブランクを超えてまた活躍しだした鈴木保奈美だが、一言でいうならチャーミング。加齢すら美にひれ伏して、さらに存在感が増している。かなりの読書家らしくマルクスからポールオースターまで幅広く読んでいるみたい。少し前にエッセイを出していたはずなので本屋でチェックしてみよう。

こうやって意識が特定の対象に向くと、調べたり感心したり、自分の書棚からポールオースターの本を引っ張り出して読み始めたりと一日が流れていくのだが、どうも長く続かない。受け身の期間が続いているからだろうか。どうにかスイッチを入れないと。



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