快楽の先取り

自宅療養59日目。5:20起床。金曜日の朝は忙しい。昨日やっていたドラマ『Believe』第8話『リベンジ』第10話を観る。わかりやすい展開に驚きは無いが、最終話まで追いかけることにする。

植物に水をやる。葉のグリーンが日に日に濃くなっていく。この狭い部屋の中に、成長する存在がいることに感謝する。息吹のかけらを心が食す。

少し部屋を片付ける。いらない洋服を捨てる。売れそうなモノがいくつかあったので、図書館に行くついでに売り払う。思い切って杖なしで出かけた。時間はあるのだから、足が動かなくなったら休み休み時間をかけて帰ってくればいいと思って。リハビリとは常に一歩先の軽い負荷を定期的にかけて、それに慣れていく作業だ。長い距離を歩くことは完治に必要な条件、体力をつけるためにもトライする必要がある。

無事に不用品を売り払う。新刊が5冊ほど買えるお金になる。1冊買える金額になればラッキーくらいの感覚だったので予想外。足はまだ平気だが、歩みは遅い。歩くという一つの運動をとってみても、全身の筋肉を指定のバランスで使っているのだと実感する。見た目は不恰好だがそれでもいい。負荷をかけ続けなければならないのだ。

そのままの勢いでサイゼリヤに行く。怪我してから初めて。安く酒を飲めて、テーブルがそこそこ広く、左右との距離もきちんとある。他のファミレスでもいいが、トータルではサイゼリヤが1番だ。

借りてきた池澤夏樹と斎藤環の本をつまみ読む。白ワインに氷を入れて、酔わないように注意する。小説は何をどう書いてもいい自由度の高いジャンルだと池澤夏樹は言う。それと同じく、人生だってどう過ごしても何をしてもいいはずだよね、とむりやりこじつける。

ペンネアラビアータと白ワインの組み合わせを何度となく食してきた。今日もその組み合わせにする。本来ならここに唐辛子のフレークをザクザクかけたいのだが提供が無くなってしまった。味の未完成。寸止め。あと1ピース。この物足りなさのせいかワインを追加してしまう。アルコールのせいで健常時の自分が全面に出てきて歩くことの恐怖感が薄れている。杖もなくほろ酔いで歩くこと。そのハードルの高さは、会計を終えて外に出た瞬間から始まるのだ。

快楽の先取りと引き換えのリスク。

喫煙所で酔いを少し覚ます。そのままルミネに入り、無印でお菓子と文房具を、本屋で浅野いにお、ムジナ第2巻を買う。発売してたの知らなかった。やはりネットだけだと必要な情報をキャッチできない。最後にドラッグストアに寄り、餃子、焼売、安い肉を買う。肉はここが1番安い。圧倒的に。なので質は問わない。とにかく筋肉をつけるために肉を食らう。

ムジナ2巻面白かった。時代のトピックが満載でスピード感もある。描き込みの密度、キャラ、寄りの表情など全てが好み。正義面してないのがいい。次巻はまた相当先になるのだろう。遠いな。どこかのタイミングでいにお作品全て集めて読み耽る。

何だかアルコールとの距離を感じる。心地よさから疲れに変わる時間が短くなっていて、以前はあまりなかった頭痛も発生するようになった。加齢によるものかそれとも不必要のサインか。老人としての数十年、どうやってしのげばいいのか。

元の生活、その休日に近い動きができた日。あと1ヶ月。とにかくリハビリだ。






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