悪の炎が燃えている

他者を「敵ではない」と感じられること。他者が安全であると信じられること。そういう他者が現実にせよ、心の中にせよ、「いる」こと。それこそが「愛すること」の正体です。

東畑開人「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」


2024.9.6。3連休の真ん中、まだ体が戻らない。あと一日あるので何とかなるだろう。ここまではできるな、という想定を下方修正する。歳を重ねるということは下方修正し続けるということだ。自分を観察、調整、納得させながら、できないことを数え上げていくこと。それは切ないことだけど、現実的にそうせざるを得ない。心と体の乖離がそれを邪魔する。まだまだオレはいけるだろ!という心の叫び。フンフンッ!と鼻息を荒くして。

草彅剛のドラマ、戦争シリーズを見直しているが、本当に面白い。悪の描き方に迫力があり、復讐に向けて残酷化していく草彅は韓国映画さながらのパワーがある。設定やドラマの進行に雑な部分はあるが、悪の力が魅力的でさほど気にならない。根っからの悪人に現実世界で関わったことはないが、おそらく自分が思うより多いのだろうな。

UNIQLO: Cのメンズラインが発売されたので見に行く。買うつもりはなかったが、パンツを一枚購入した。流行りのワイドばかりだけど、柔らかいテーパード感がきれいなシルエットになっていた。ヨーロッパのデザイナーはシンプルなアイテムの表現力が素晴らしい。レディースのシャツなんか完全にUNIQLOっぽくないし。コントワー・デ・コトニエのコットンサテンのシャツがとにかく素敵だ。フリルは可愛いだけでなく高貴なイメージがある。ヨーロッパの貴族が愛好していたのだから当然だろうか。今の中性的な若者にはよく似合うんだろうな。若さが羨ましい。

町屋良平『私の小説』を少し読む。帯の惹句は『物語の新地平をひらく作家の〈新しい私小説〉』とある。私小説に古いも新しいもあるのかな?と一緒思うが、今まで書かれたことのないスタイルで、という意味だろう。実際の日常を活写するなかに飛び込んでくるナルシシズム、合間に挿入される創作論。好みの文体。連作短編の形で、それぞれにサブテーマがありそうだ。このスタイルだと、ダラダラ続くと退屈になってしまうので、熱量の調整が文体に反映されてることを願う。

だんだんと日常が戻ってきている。そして自分が動くことで新しく始まる何かを呼び寄せる。飲み会ばかり参加していたせいだと思っているが、疎遠になっていた友人から突然連絡があり飲んできた。かなり大変な日々を過ごしていたことを知り、それなら約束を保護にされても仕方ないよと伝えた。トラブルや大きな悩みが訪れると時空が変わる。今まで存在していたレイヤーから離れて、小さな穴に放り込まれる。それがブラックホールでないことを祈りつつ、もがく。そこから出ると元のレイヤーに戻るが、出た勢いで新しいレイヤーを目指して動くと、新しい波が発生し、やがては流れになる。空気をかき混ぜ、風を起こす。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?