九年前の祈り　小野正嗣

外国人と結婚し、障害のある子供をひとりで連れて大分の故郷に帰ってきた娘の心奥の救いを巡るはなしである。
田舎で育った女の人生の現在と田舎の現在の形が海近くの光景の中で一つの典型と言って良い流れで描かれる。
独自性を与えるのは田舎に入り込む外国の形の現在であろう。
自然と人間の持つ原初的風景とかなしく折り込んでしまう田舎の今のかたちの振幅の開き具合が興味深い世界を作る。