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沖で待つ 絲山秋子

住宅設備機器メーカーに入社し、最初の赴任地福岡に一緒に配属された総合職同期男女の同志とも言える絆を振り返る話である。男は福岡の会社で二人の同僚でもある地元の女と結婚する。同期の二人はさまざまな現場でのトラブルを生き抜くために支え合い、恋愛とは異なる絆を持ち続ける。女は、埼玉営業所に転勤となり、男もだいぶ遅れて東京に単身赴任となる。二人は十年近く会わなくなる。しかし、男は、赤の他人の飛び降り自殺に巻き込まれて呆気なく突然死んでしまう。女は、男と以前相互に約束していたことを果たすために男の一人暮らしていたアパートにやってくる。自分のパソコンのデータを死んだときはこっそり壊す、はずかしいい秘密を消すためにという約束であった。理不尽な仕事に追いまくられる中で築かれた同期の男女の同志愛が懐かしく思い出される。そこには、女性が仕事に本気で取り組んで行こうとした新鮮な覚悟や何を支えに青春の時間を自分は過ごしたのかということへの誇りのような主張も伝わってくる。
描写や感情の掴み方がぶっきらぼうなくらい大味なのも味なのかもしれない。

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