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きことわ 朝吹真理子

記憶と時間から見た日常と言ったら良いのかもしれない小説である。ストーリーは、ほぼ無い。葉山の別荘で幾たびか共に時間を過ごした歳の離れた女の子が40を過ぎ、別荘をたたむことを機に再び出会う。別荘で会わなくなったのは、年下の女の子の母が持病で亡くなった時からであった。そうしたことが、歳上の女の子の地質や気候への興味からの視線で、記憶を行き来させながら描かれる。生きることは現実の時間を刻むだけでなく、眠りのように記憶を行き来する時間を持っているものなのだと言うことを改めて思い起こさせる。その大切さを改めて豊かに感じさせる。そのような小説である。

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