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ウケたい

尊敬するくりぃむしちゅーのお2人 有田さん、そして上田さんへ

拝啓

いやぁ、まいりましたね。

日を追うごとに夏らしくなる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。こちらロンドンは、日に日に暑くなっております。日本も猛暑ですかね。

この手紙が上田さんにまで届くことを祈っています。

ウケたい 

蒼乃沙羅

【Abstract】

人間関係を構築する上で、ユーモアという要素は欠かせないものだと感じます。それぞれの国にユーモアの特色があり、各人に笑いのツボが存在します。そのユーモアの像をしっかりと捉えて、《ウケを頂く》。これが良い人間関係を作る秘訣だと考えます。

わたしは今、イギリスで生活をしていますので、第二言語からの視点、普段の会話で意識していることなども混ぜながら記事を書き進めていきたいと思います。


【Introduction】

ウケを頂くことに苦しんだ1年間でした。

海外でウケを頂くのは、格段に難易度が上がるな、と感じております。

英語で話さなければならない、ということもありますが、背景にある文化的コンテクストが全く異なるという要因があります。話し手のリズム、テンション、ツボ、ユーモア、ボディランゲージ、なにかも話し手によって異なります。

相手の笑いのツボを正確に把握し、そこに向かって、ウケを頂きにいかなければなりません。笑いというのは当たり前ですが、共同作業です。まずは相手を知り、そして、自分の戦い方を考えます。

笑いの引き金となるものをここでは、《バグ》と定義してみたいと思います。

日本語で話す場合は、話のトーン、語気、表情、言葉などを自由に操りながら話すことができます。(もちろんネイティブですから)引き起こすバグを意識的に操縦しながら(バグの大きさを調節し)多角的に考えながら話すことができますよね。

しかし、英語ではそうはいきません。

言葉をうまく扱えないことに加え、文法的な違和感、トーンの違和感、流れの違和感などをはじめ、全ての違和感が意図的に引き起こしたバグとの高低差を狭めてしまいます。それらが《ウケを頂く》ことにおいて、非常に大きな障害になってしまいます。

バグ

-愉快な会話をするために-

愉快な会話とはどのようなものでしょうか。

それは”ワープのある会話”ではないかと考えます。ワープの説明として、ドラえもんの漫画にこんなワンシーンがあります。

ワープ

会話におけるワープは、バグだと思います。

会話をしている時、
意味のないことをどう伝えるか、(意味を伝えたいわけじゃないというか)
二人で共有している世界観の中でどう遊ぶか、みたいなことを私はよく考えてしまいます。

意味のみを伝達する会話が続いてしまうと、
それはとても一方通行的な会話になってしまい、記号的なつまらない会話になってしまいます。

かといって、バグだらけの会話になってしまうと意思疎通は難しくなってしまいます。

バグの飽和

バグ: 意味を伝達させることを目的としていない言葉(群)
ex.) 上田の例えツッコミ

バグド:相手がバグを受け取ること、バグをどう受け取るかということ
→バグド=バグ➕(背景にある文字通りではない)意味、(バグを放った方の)人物像、コンテクストによって立ち上がってくる意味 etc.

とすると、、、

バグーバグド

Aが放ったバグをBが解釈を加えた上で、バグドとして受け取る行為が成り立ちます。

-上田 ロッキーの撮影じゃないのよぉ-

実際に例を用いて考えた方がわかりやすいと思いましたので、伝説のワンシーンを引用させていただきます。

まずはこちらの動画をご覧ください。

藤木: みんな、ゾロゾロついてきてるんですけど…

上田: あの、ごめんね。
    これ、あの、映画「ロッキー」の撮影じゃないんで。
    そんなにワーっとついてこられても困んのよぉ。

上田: ふふふ(ドヤ顔&シタリ顔)


<上田さんの心の中>
うわ、俺の例えツッコミが決まったぞ。映画「ロッキー2」のワンシーンに例えて、今の状況を鮮やかに一言で説明してやったぜ。これはウケるだろ!


<周りの心中>
こいつ何を言っているんだ。いきなりロッキーの撮影とか何とか言って。というか、ロッキーって誰やねん。この状況でロッキーなんて一言も出てきてないぞ。


バグ→ ロッキーの撮影じゃないのよぉ〜

バグド(上田さんが受け取って欲しいもの)→ ロッキーの撮影のように子供がゾロゾロついてきてますね。まるでロッキー2の撮影現場みたいになってますね。まさに俺(上田)がロッキーみたいになってるな!

上田さんが放ったバグが、文字通りバグとして浮遊してしまっていることが顕著にわかるワンシーンです。これは、怖いですね。日常生活でなにか滑った時、この動画を見返すようにしています。とても励まされます。上田さん、いつもありがとうございます。

この事故は日本語で起きてしまっておりますが、英語での会話における私自身のモヤモヤと一致するところも多くあります。

バグをバグドとして受け取ってもらえないと、自身が考える自分像と相手が描いている像の乖離をつきつけられた気になります。

選び取る一つ一つの言葉に自分のパーソナリティが、反映されているのかを考えるようになってきます。

自分らしい英語って何だろう? 
ニュアンスがしっかりと伝わっているのかな? といった風に。

バグーバグ

ただ、バグーバグドが完成した時、

記号を超える伝達ができた時、

バグが、言葉の意味性を超えた時、

あ、今、通じ合っていると感じます。

今、世界観を共有することができていると感じます。

それがとても嬉しいです。

バグーバグド

-投擲-

別の角度から考えてみたいと思います。

それぞれの人が持つユーモアの領域を、<壁>として考えてみたいと思います。

言葉の壁当て

何気ない会話を繰り返すことは、とても大事ですよね。

なんでもない言葉の壁当てを繰り返すことによって、相手が普段どんなことを考えているかの断片を掴んでいきます。

この最初の段階において、相手の笑いの壁がどのような構造をとっているのかについて考えます。自分が発した言葉に対して、どのような反応をしているのかを感じ取っていきます。

自分が当たり前だと思って発した言葉に強く反応したり、ジャブ程度のボケに全く反応してくれないなど、さまざまな反応があります。相手の言語感覚とユーモアの感覚に寄り添っていこうとする意識がとても大切だと思います。

今、あなたがウケを頂きたい、と考えているとします。

それはつまり、これから投てきを行おうとしているとも考えられるのではないでしょうか。

こちらウケの平面図です。

PLAN UKE

しかし、投てきと異なる点は、遠くに飛ばせよい、という訳ではないことです。

会話をしている相手によって、フィールドの大きさは変わってきますし、笑いの壁もエリアも変わってきます。どこにユーモアのボール(種)を落とせばいいのかについて、敏感であるべきです。


SECTION A-A'

断面図を見てみます。
フィールドをa-eのエリアに分けて考えてみようと思います。

a -普通のことを発し当たり前のこととして受け取られる。
b-d -(笑いの大きさは違えど)意外性のあることを言い、笑いが起きる。
e -何を意図しているのか相手に伝わらず、滑るという現象が起きる。

上の動画でも話していましたが、笑いを起こす上では、予測不可能性はひとつのキーワードになるのではないでしょうか。

大きなウケを頂こうとした場合、このdeのヒリヒリ感を味わうことになり、予測不可能性を追い求めると、相手が受け取ってくれない可能性が高くなることは必須です。

相手が予想すること<  X  <相手が理解すること

この間のXにボールを投げ込まなければなりません。

相手に伝わらない場合、奈落の底、滑る、が待っています。(ロッキーの撮影じゃないのよぉ〜のように)

私は、イギリス生活で数え切れないほどの奈落の底を経験しました。バグの説明を求められ、事細かく説明したこともありました。地獄です。バグの説明は求めないで欲しいです。

SECTION FRIEND A

FRIEND Aを見てみます。
1の壁は高いが、2の壁は低いのが特徴の友人です。

このタイプは慎重にいかなければなりません。

しかし、慎重にボールを放ってしまうと、

SECTION FRIEND A

壁1に引っかかってしまったり、

かといって、力んでしまうと、

SECTION FRIEND A

壁2を越して、奈落です。

また、人のツボは千差万別です。

SECTION FRIEND B

しかし、この「壁」の考え方は、大喜利をするような発想に近くなってしまっています。普段、日常の会話で《ウケを頂いてやるぜ》などと考えながら会話をしている人はいないですよね。それはおそらく上田さんくらいだと思います。(いつなんどきでも、例えツッコミを入れる機会を探しておられます。もちろん仕事ですが。)

普段から上田さんのように会話をするのは、やかましいと思われてしまうだけです。

そこで、この「壁」とバグーバグドの概念を統一して考えてみます。

普段の会話では、ボールのみではなく、フィールドごと歪ませる、操ることを考えているのではないかと思います。(例えば、内輪ネタなど。)それらは、とても優しいボールの会話であり、とても近距離的な(親しみを持つ)会話であり、《ウケを頂く》行為であると思われます。

バグ・バグドの関係性
detail sketch   手渡しの図


これがバグのボールだよ、みたいな感覚?

バグを受け取る側も積極的にボールをもらいに行くよ、みたいな感覚?ですかね。

-自主練習-

どうバグを放り込むかは常日頃から考えなければなりません。ウケを頂くためには自主練習をすることが大切です。

上田さんより

上田さんが、駆け出しの頃、やっていた訓練です。

若い頃、電話帳に登録してある女の子にランダムに電話をかけていたそうです。思いついた例えツッコミを試すための電話です。

なんでもない電話と装いながら、隙あらば自分の例えツッコミを通話中に挟みこむのです。相手の反応と自分の手応えをメモに記していきます。こんな風に。

上田 メモ



今では、堂々とバラエティで、ニュースで、オリンピックの解説で、例えツッコミを披露されていらっしゃいますが、あれは努力の賜物なんですね。

思いついた数多くの例えツッコミから厳選され、生き残った優秀な例えツッコミを披露されている訳です。

今でも上田さんのデスクトップファイルの中には、「新しく考えた例えツッコミ集」というファイルがあるそうです。


*画像はイメージです。

地上波で新しい例えツッコミが披露されるのを拝見すると、

「あぁ、また新しい例えツッコミを日常生活で考えていらっしゃるんだな」と感心します。

私も日々の積み重ねを大切にしていきたい所存です。

【Case study】

日常生活でのウケの報告です。
ウケを頂くのは本当に大変です。

-成功例-

ウケの報告
フランスに1週間ほど前に到着しました。
みんな、当たり前のようにフランス語を話してて騙された気分です。そんな中、友人とハンバーガーを買い出しに行きました。彼女が、フランス語での注文に緊張している中、ボクが言った一言でウケました。

「もし、ヘルプが必要だったらボクに頼りなさい。完璧な発音でBonjourって言ってあげるから。」

これ、ウケました。

日記

バグ→ Bonjourって言って助けてあげるよ(何も意味をなしていない)

バグド→お調子者の沙羅がまた変なこと言ってる、全然話せないのにやかましいな。

フランス滞在時、私だけフランス語を話せないという状況に劣等感を抱いていました。

周りの友人も、私がフランス語を全く話せないことを認識していました。この状況を笑いに還元できないかなと考えていたところに、友人が緊張している場面がやってきたので、躊躇なくバグを挿入することに成功しました。結果、ウケました。結構ウケてた。

-失敗例-

サハラ砂漠
サハラ砂漠の'サハラ'は
アラビア語で、砂漠って意味だよってガイドさんが言った時に

ゴリラの正式名称、ゴリラゴリラみたいになってるな!
って上田晋也さんお得意のツッコミをいれたらすべった。
上田を問いつめたい。

旅行中の日記

バグ→(ゴリラの正式名称) 意味をなしていない。
バグド→ 意味をなしていない。背景を共有できていない。相手方になぜ私がゴリラの話をしているのだろうという疑問を生じさせてしまっている。

バグとバグドが一致してしまう場合、(バグが文字通りバグとなっている場合)地獄の空気が流れます。

これは、私自身が、周りのコンテクストをよく理解していないことからくる失敗です。それはそうですよね。想像してみてください。

あなたは今、エジプトに旅行に来ています。

サハラ砂漠に向かっている車中です。ガイドさんが丁寧に説明をしてくれています。サハラ砂漠についての説明です。ゴリラの話は一度も出てきておりません。懇切丁寧にサハラ砂漠の説明をしているときに、ゴリラのツッコミを入れても、

「あ、そうなんだ。ゴリラの正式名称ってゴリラゴリラって言うんだね、サハラ砂漠と同じことになってるね。それで何が言いたいわけ」

となるだけです。

自分勝手なバグを挿入することはやめようと思いました。

【Conclusion】

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に少し付け加えます。

-後悔すること-

《ウケを頂く》ことにおいて、一番後悔することは振り切れなかった時です。

「会話の中で、この一言を言うために最善を尽くしただろうか」

「準備は的確だったか」

「しっかりと文脈を先回りして読むことができていたか」

「思いついたバグがあったにも関わらず、勇気が出なくて堂々とバグを入れられなかった」

など、日常生活で悔やまれることはたくさん出てきます。

それらをしっかりと振り返りながら、より良いユーモアの種をまくことが大切であると感じています。とくに国民性によっては、笑わせたもん勝ち、みたいなところがあると思います。

どれだけスマートに、時には皮肉をこめて、また時には、物事を斜めから見て発言することができるか。そのような能力が大事なように思われます。

ウケを頂くことにベストを尽くそう 

その日のベストを常に尽くしていきたいと思います。

一番最後にくりぃむのラジオ一覧を載せています。ご興味あればぜひ。↓

【Bibliography】

-書籍-

上田晋也(2021)『経験』この10年くらいのこと.
上田晋也(2022)『激変-めまぐるしく動いた30代のこと』ポプラ社.

-ラジオ・動画-

くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン 第117回 ウケの報告

【Postscript】

-くりぃむしちゅーラジオ一覧-

こちら、くりぃむしちゅーのオールナイトニッポンの一覧です。全166回分をまとめました。私がまとめたものになります。学部時代、ラジオを聞きながら思ったこと、学んだこと、日常生活に役立てそうなことを書いていました。参考になればと思います。女性の皆様、少しお下品な表現も入ってます。(できる限りマイルドにしましたが)ご了承ください。

今までありがとうございました。このラジオから学んだモノの見方、事実の切り方は海外でも通用しました。本当にお世話になりました。

この記事で何度か、上田と呼び捨てにしてしまい、すみませんでした。上田さんのことはとても尊敬しています。

また、ラジオ復活してほしいです。友人と出待ちしたい!

私と友人と有田さんと上田の本と。
上田と。


あったかくして、寝ろよぉー。

敬具

蒼乃沙羅




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