パパの日な父の日。

 それは、五月も終わりかけのある土曜日のこと。
 圭吾は仕事、准教授は担当研修医の患者さんが落ち着かないので休日出勤。
 美奈と私は、予定がないので昼ごはん後に、お茶会という名の暇つぶし。今日は雨だから、子どもたちも家の中で遊べる相手がいるほうが親が楽だ。
「ねー、まま」
 雨芽ちゃんと遊んでいた樹に呼ばれ、振り返る。
「…樹、重くない?」
「んーん」
 もうすぐ二歳になる雨芽ちゃんが、ひしっと樹の腰にしがみついて寝ているのだ。樹は慣れた様子で本を読んでいるが。
「それで、どうしたの?」
「んーとねえ、ぱぱに、ぱぱのひ、する?」
 思わず美奈と顔を見合わせてしまった。
「パパの日…」
「父の日か」
 お義父さんへのプレゼントの話はしていて、美奈ともその打ち合わせもあっての今日だったのだ。
 父の日は、小松崎家にプレゼントを持っていき、晩御飯の予定。
 美奈たちは、本来なら桐谷先生のご実家に行く予定だったのが、あちらに来客予定が入って、前週に前倒しになった。だから、やっぱり私たちと一緒だ。
「考えてみなくても、圭吾も『パパ』だわな…」
「美樹、おじさんのプレゼント考えてて、忘れてただろ」
「うん。やば…迂闊だったわ」
「去年は? 事件の前だったでしょ」
「…それがさあ」
 完全に失念していたのだ。
 去年の今頃って、確か圭吾との関係を前向きに考えようって試行錯誤してたんじゃなかったっけ。
 あと、指輪作りに行って、あいつの誕生日、知って、それで頭を悩ませてた。
 左薬指の金の薔薇を眺めてため息をつくと、それだけで何となく悟ったらしい。
「あー…まあ、しゃーないわな。去年はそれどころじゃなかったか」
「個人的にはね」
 でも、何もなくて、がっかりしてたんじゃないかなあ。
 母の日は、去年も今年も、樹がお義父さんが育ててるカーネーションの世話をお手伝いして、お駄賃にもらった花をくれたし。
「樹、パパの日のこと、誰から聞いたの?」
「ぱぱ」
「そっか…」
 あかん。これ、スルーしたらあかんやつや。
 頭を抱えかけたが。
「でも、ぱぱ、しーだよってゆってた」
「え、ママには内緒ってこと?」
「うん。えっとー…こまかいことをきにするおとこっておもわれちゃ、こかんがわるいって」
「沽券に係わるね…」
 ため息をつく横で、美奈が「あれ?」と首を傾げた。
「でも、内緒って言われてたのに、ママに言っちゃっていいの?」
「だってー、ぱぱ、しょんぼりしてたもん。いつき、ぱぱのひ、しらないのかーって」
 そういやそうだな。
 今どきの保育園だからか、樹の園では「母の日」「父の日」ではなく、「おうちのひとにありがとうの日」と言っている。樹がカーネーションをくれたのは、お友達から聞いたからだ。「ままにおはなあげて、ありがとーってゆーひなんだよ」、と。
「確かに、父の日の花って、あんまりイメージないかも」
「向日葵とか、紫陽花…かな?」
「うちは花じゃなくて、ネクタイとかハンカチ、あげてたなあ」
 美奈が呟いた。
 樹を見ると、小首をかしげている。
「樹、パパの日、する?」
「うんっ。ままにありがとーしたから、ぱぱにもありがとーってする」
「じゃあ、パパには内緒で準備しよっか。樹、秘密にできる?」
「できる! ぱぱ、びっくりするね」
 見るからにわくわくしている樹に、美奈が笑う。
「うちも、しようかなあ。隆俊さんに、いつもありがとうって」
「いいんじゃない? 旦那じゃなくて、パパとしてもありがとうって」
「みなちゃんも、ぱぱのひする? なにする?」
「そうだねえ…プレゼント、用意して、おいしいごは…だめだわ」
 超絶料理音痴だからな。
 がっくり肩を落とす美奈に、樹が「みなちゃんのおりょーり、あぶないもんね」と止めを刺した。
 すまん、うちの息子、正直者なんだ。
 うめき声をあげてテーブルに突っ伏す友人にため息をつき。
「手巻き寿司なら、大丈夫なんじゃない?」
「手巻き寿司…」
「寿司飯はさすがに不安だから、うちで作ればいいでしょ。まぐろとかも、ヅケにするなら漬け込み液は、私が監視してりゃ危険兵器にはならないと思うし。あんただって材料切るくらいはできるんだから、ほかの具材は何とかなるんでない」
「みき~~っ女神さま!」
「まあ、副菜とか汁物は、ダンナに頼るしかないけども」
「いい。汁物は永〇園のマツタケのお吸い物でいく。あと、副菜は、昼ご飯ならなくても誤魔化されてくれるってか、隆俊さんなら、手巻きだけでも理解してくれると思う」
 キッパリ言い切る辺り、信頼関係は出来上がっているようで何よりだ。
 と、いうわけで、当日まではダンナたちに秘密の父の日作戦、決行となった。


【小松崎さんちのぱぱのひさくせん】

「ならさきせんせー」
「どうしたの、樹くん」
「あのね、ぱぱのひ、したいの」
「パパの日? ああ、お父さんにありがとうってするんだね」
「うんっ。このまえ、ままにありがとーってしたの。そしたらね、ぱぱが、いつきはぱぱのひ、しらないのかーってしょんぼりしたんだよ。でも、こかんがわるいから、ままにないしょなの」
「こか…そっか。うん、じゃあ、今度のおうちのひとにありがとうの日は、紫陽花の折り紙して、ありがとうのカード、作ろうね」
「うんっ。せんせー、ぱぱのひね、ぱぱにないしょだから、しーね」
「パパに内緒なの?」
「ままと、ぱぱ、びっくりするねってさくせんなんだよ。だから、ないしょ」
「そっか。なら、先生も内緒にしておくね」

 あの男前が父の日してもらえなくてしょんぼりかーとにやにやする楢﨑氏。


「まま、ぱぱのひ、ぷれぜんとする?」
「そうねえ。何をあげようかしら」
「りかちゃんのまま、ねくたいだって」
「そうなの?」
「うん。まさちゃんのままは、はんかちとかさでー、まりちゃんのままはおしごとのかばんだって」
「…樹、保育園中でリサーチしてんのか」

 樹がひとりに訊く→周りの女の子たちが我先にと教えてくれるの図です。


「すみません。父の日のプレゼントを探しているんですけど」
「いらっしゃいませ。お客様のお父様ですか」
「あ、いえ。夫なんです。どんなものをあげればいいのか、悩んでしまって」
「なるほど。父の日なら、ネクタイなどを贈られる方が多いですが」
「それが、あまりスーツは着ないんです。なので、余計に小物の選択が難しくて」
「そうなんですね。スーツは全くお召しになりませんか?」
「いえ、年に数回は」
「でしたら、少し華やかなものや、デザインが目を引くものを贈られるのはいかがでしょう。普段、ネクタイをされない方ですと、ご自分ではあまり凝ったものは選ばれないことが多いので」
「そういうものですか。あ、でも、持ってる数少ないネクタイが、こちらのものだったんです。デザインの好みはあいそう」
「ありがとうございます。失礼ですが、旦那様のお名前をお伺いしても?」
「小松崎圭吾です」
「ああ! お医者様の小松崎様ですよね?」
「ええ」
「でしたら、お任せください。多少はお力になれると思います」

 お店のアドバイスのおかげで、ハンカチとネクタイをゲットしました。
 後日、「大変お綺麗な奥様で」と言われ、デレつくオプションつき。


「あ、圭吾。もうちょっとしたら、美奈が来るから」
「美奈? なんで。実家に行くの、夕方前だろ」
「なんかね、桐谷先生に父の日のランチ、作ってあげたいんだって。でも、うっかりバイオハザードになっても困るから、私が監視」
「ああ…」
「樹がうっかり失敗作食べたらマズイから、キッチンに入って来ないように見ててもらっていい?」
「わかった。成人でもヤバかったからな。幼児が食ったら、完全致死量だ」
「…うん」

 どんだけ、と思いましたが、数年後、ダンナの誤食で修羅場(バレンタイン)を経験する羽目に。


【桐谷さんちのぱぱのひさくせん】

「美奈、そのハギレの山、何?」
「ん、新しい雨芽のベッドカバー、パッチワークで作ろうかと思って。ほら、これとこれをこう並べると…」
「お、花みたい」
「でしょ。これをたくさんつなげて、色も変えて、一枚にするの」
「へー。美奈、手芸は上手いよな」
「なんであんなに料理、駄目なんだろうねえ…」
「いいじゃん、別に。世の中、包丁も持てない旦那なんて腐るほどいるんだし。美奈、掃除上手いし」
「…うん。隆俊さんのご飯、おいしい」

 しみじみと、いい旦那に捕まったなあと思う、元野良猫。


「いっく、しょれ、なあに?」
「これねー、ぱぱのおかおだよ。ぱぱのひに、ぷれぜんとするの」
「ぱぱにょひ?」
「うん、ぱぱ、いつもありがとー、だいすきーってするの」
「うめもっ、うめもしゅる! うめ、ぱぱ、だいしゅきだも」
「じゃあ、うめちゃんも、がよーし、はい。くれよんも」
「あいあとー」
「おえかきしたら、おうた、れんしゅうする?」
「しゅる!」

 雨芽ちゃん二歳弱ですが、おにーちゃんとばあばのおかげで、言葉は早い。


「隆俊さん、今日ね、お昼くらいまでお隣行ってくるから、雨芽、お願いしてもいい?」
「いいけど。昼も向こう?」
「ううん。えっと…父の日だからね、頑張って、感謝の料理、作ってみようかと」
「え!?」
「でも、それで隆俊さん殺しちゃ意味ないから、美樹に監視してもらうってことになってて」
「そ、そうか」
「大丈夫。普通に食べられるもの、作ってくるから! 万が一、失敗しても、夕飯は安全豪華だから!」
「う、うん。楽しみにしてるから、頑張って」

 嬉しいが、市販薬で対処できるか不安すぎて、胃痛起こしました。


【ぱぱのひ、じゅんびちゅう】

「ぱぱ、ままとみなちゃん、おだいどころ?」
「ああ。でも、樹は入っちゃ駄目だぞ」
「どーして?」

『だから! 寿司飯を捏ねるなと、ゆーとろうがっっっ』
『ご、ごめ…切るように、だよね』
『よ・う・に、ってのは、直喩だ!!! 本当に切るなっ米粒磨り潰すなっ』

「まま、ぷんぷん?」
「…ぷんぷん通り越して、カンカンだな」
「…こわいね」

『美樹っ、卵焦げるううううう!』
『落ち着け! うわっ、なんで弱なのに真っ黒になんの!? とりあえず、下ろしてっ』
『美樹いいいいいいいいっ』
『泣くなっ。ええい、もうあんたはIH使うな! レンジでいこう。あ、でも、あんたは触るんじゃないわよ、うちのレンジ、高いんだからっ』
『え、でも、スイッチくらい…』
『給湯室のレンジ、三台おじゃんにした女が言うな』

「ぱぱ、こげこげのにおい、くしゃい」
「臭いな…。樹、公園行こうか」
「うん」


「あっ、うめちゃんとせんせーだ!」
「いっくー!」
「なんだ、お前も避難か」
「避難って何から」
「美奈の料理から。今、うちのキッチンで修羅場展開中だ」
「大丈夫、知り合いに食中毒起こしたら受け入れ頼むって連絡して、病院も薬も打てる手は打った」
「…命がけだな。よくわかるが」
「美奈の手料理なら、机が出てきても完食する覚悟はある」

 何でも食う国民でも食わないものでも食うと言い切る根性に、ちょっと涙が出ました。


【桐谷さんちのぱぱのひ】

「ただいまー…」
「たーいまー」
「お帰りー。お昼ご飯、できてるよー。今日はリビングに用意してるから」
「お、おう。…手巻き寿司?」
「うん。さすがに、ハンバーグだの、カラアゲだのは、無謀だから。美樹にしばかれながら寿司飯作って、美樹に罵倒されながら具をちょっと作ったり、切ったりしました。お吸い物はインスタントだけど」
「…っ、いいっ、全然問題なし! こんだけ具を準備するの、大変だっただろ」
「んーん。ヅケは美樹監修だし、卵焼き以外は本当に切るか盛るかだから。メスも随分持ってないから、包丁に少しドキドキしたけど」
「メスと包丁、全然違うけど、もうどうでもいいや。雨芽、ママがごはん作ってくれたぞー」
「……………」
「あれ?」
「雨芽、大丈夫だから。お隣の美樹子さんが一緒に作ったから、そんなに警戒しないで」
「………………あい」

 雨芽ちゃんチェックも無事にパス。


「あー、美味かった。どう考えても食べすぎた」
「うん…あれだけ泣きながら美味しい美味しい言ってもらえたら準備した甲斐があったわ」
「お世辞抜きで、美味かったよ。なー、雨芽」
「あいっ。まきまき、おいちー」
「ならよかった。じゃあ、食後のプレゼントです」
「え?」
「私からは、座布団。開けてみて?」
「う、うん…あれ、これ、雨芽のベッドカバーじゃ」
「実は、隆俊さんのプレゼントでした。診察室の椅子、座り心地よくないでしょ。それがあったら、少しはマシじゃないかなあって」
「あ…ありが、と」
「うめはー、ぱっぱのおかお! ぱっぱ、だいしゅき」
「う…うめ、」
「あとねえ、おうた、れんしゅーちたの」
「肩たたきのお歌なんだよねー」
「ねー」
「雨芽ねえ、パパの肩たたきしてあげるんだーって樹くんと練習してたのよ。…隆俊さん?」
「みなあああああああああうめええええええええ、だいすきいいいいいいいいいいいい!!!!!」

 過去最大級の涙腺崩壊と相成りました。

【小松崎さんちのぱぱのひ】

 何とか美奈の手巻き寿司を形にして、送り出し、急ぎに急いで、料理を仕上げた。
 晩御飯は、お義母さんがいい肉があるのよーと言っていたから、あっさり魚にした。
 ふたりが出かけてくれて、助かった。実は、樹と打ち合わせて、料理中は公園に誘うように言ってたんだけども。必要なかったみたい。美奈の料理、すげえ。
 昨日のうちに準備して、庭に出しておいた向日葵のアレンジメントもダイニングテーブルに飾る。よし、いつ帰ってきてもいいぞ、と思ったときだった。
「ただいまー」
「ただいま。樹、手ぇ洗えよー」
 玄関からふたりの声がした。
 出迎えると、圭吾の後ろで樹がピースしている。私を見ると、さっと洗面所に入っていった。うん、計画通り。
「お帰り-」
「お、美奈、帰ったのか」
「うん。何とか食べられるものできたから。いやー…聞いて知ってるつもりだったけど、冗談抜きで凄かったわ。バレンタインのケーキのときも大概だったけども」
「な。あいつがひとり暮らししてたときって、お袋がとにかく心配して、週末は必ず飯食いに来いって厳命してた」
「すっごいわかる。私が病棟勤務だったころ、美奈がレンジ使うときは、さりげなく誰かが見張るようにしてたし」
 話しながら、ダイニングに誘導。
「マジか…。そういや、あれの面倒見てたんなら、昼の準備、できてないだろ。なんか作るか?」
 テーブルのアレンジメントを見て、首を傾げているけども。
「あ、大丈夫。できてるから」
「え、そうなん? すげえな」
 目を見張るのは、あの修羅場を聞いていたからだろう。
 うん、私も間に合わないかと思ったが。人間、やればできるもんだ。
「いいから、座って座って」
「お、おお」
 座った圭吾の前に、小ぶりの寿司桶を置いて、蓋を開ける。中は、ひと口サイズの手毬寿司。
「まずはー、真あじとサーモンの手毬寿司」
「うん」
 真あじとサーモンを交互に並べているから、我ながら彩りもいい。
 寿司桶に見入っている圭吾に笑ってしまいながら、楕円形の大きい深皿を運ぶ。これが、メインディッシュだ。
「で、いい鯛が買えたから、丸々一匹のアクアパッツァ。スープたっぷり野菜たっぷりだから、汁物代わりにもなります」
 これは結構自信作。最近、庭で樹と一緒にハーブを育てていて、フレッシュなものが使えるのも大きい。
 二品だけど、ランチとしてはボリューム満点、だと思うんだけど、どうだろう。
 圭吾は、ふたつを見比べ、不思議そうな顔だ。
「…なんか、豪華だな」
「うん。樹ー! いいわよ」
「はあい」
 さっきから、ダイニングの入口からこっそりこっちを窺っていたのだ。
 両手に荷物を持って飛び込んでくると、圭吾に駆け寄った。
「ぱぱ、ぱぱのひ、ありがとー!」
「え…え、これ?」
 料理とアレンジメント、樹が差し出したプレゼントを見比べて、なんでかえらい狼狽えている。
「ままとぼくね、ないしょでぱぱのひ、じゅんびしたんだよ。びっくりした?」
「…ああ」
 重いだろうに、樹を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめる。
「ぱぱ、うれしー?」
「ああ。すっごく嬉しい」
「やったあっ。あのねー、これね、ぱぱのおかお。こっちは、ありがとーのかーど! ほいくえんでつくったんだよ」
 自慢げに画用紙を広げる樹を膝に乗せ、圭吾は笑っていた。目が赤くなっていたのは、気づかないふりだ。
「樹、折り紙上手いなー。カタカナも書けるのか」
「うんっ、れんしゅーした」
「絵も上手だな。パパそっくりだ」
「ほんと?」
 放っておくと、いつまでもいちゃいちゃしてそうな父子なので、適当なところで声をかけた。
「ふたりとも、先にご飯食べちゃいましょ。遅くなると、夕飯食べられなくなるわよ」
「お、そうだな。樹、あとでゆっくり聞かせてくれ」
「はーい。あ、ままもぷれぜんと、あるんだよ」
「そうなのか」
 驚く圭吾に頷いたものの、今出すと、料理が冷める。
「ご飯のあとでね。アクアパッツァ、冷めちゃうわ」
「楽しみにしてる。そうか、父の日のごちそう、か」
 嬉しそうにテーブルを眺める顔に、準備してよかったと思った。
「お酒は駄目だけど、ノンアルコールビールならあるわよ」
「いや、いい。料理だけで十分」
「まま、おなかぺこぺこー」
「はいはい。じゃあ、ちゃんと座って」

 楽しくお昼を食べて、プレゼントをあげて。
 予定通り、夕方前には小松崎家に向かったんだけども。

「兄貴、なんでスーツ着てんの?」
「たまにはいいだろ。ネクタイ締めたいときもあるんだよ」
「休日、実家に来るのに?」
「いいからほっとけ」

 盛大にやける圭吾の横で、ちょっと居心地が悪かった。

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