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劇団四季「リトル・マーメイド」はなぜ傑作か

子供の頃から大好きなディズニーアニメ「リトル・マーメイド」。
これの劇団四季版が傑作なので紹介したい。

原作はアンデルセンの「人魚姫」かな。
小学生の頃に読んで衝撃を受けたんだけど、
なんとこれ! バッドエンド!
アリエルは最後、自分の胸に短剣を突き立てて泡になって消えてしまう。
お姉さんたちが「アリエル! これで死ぬのよ!」ってくれたナイフで。
そんなことある?

しかしさすがのディズニー、
輝かしいハッピーエンドにアレンジしてきた。
子供の頃からディズニーの「リトル・マーメイド」が大好きだったけど、
劇団四季で「リトル・マーメイド」を観た時に
こんなに素晴らしい作品だったかと衝撃を受けて、
ディズニーの方も再び視聴した。
そこで私は劇団四季の「リトル・マーメイド」が
特別に好きなのだと気付いた。
年5回観た。
劇団四季の「リトル・マーメイド」は本当に傑作。
以下、ストーリー詳細。

アリエルは十六歳の人魚姫。
人間の世界に憧れて人間の世界のものを集めている。
アリエルの姉たちが歌う。
今日は音楽会。
しかし末っ子のアリエルは音楽会のことを忘れていた!
お父さんのトリトンはアリエルが来なかったことに怒る。
「思春期の娘を甘やかしすぎているかもしれない」と悩む。
「そんなことはない」と答えるのは従者のカニ、セバスチャンだ。

海上を行く船。
船にはエリック王子が乗っている。
「王室にこもりっきりなんて絶対に嫌だ。海を見ないと!」
嵐がくる。
エリック王子は海に投げ出される。
アリエルがエリック王子を助けて浜に運ぶ。
アリエルはすっかりエリック王子に恋をしてしまう。
浜辺で歌うアリエル。
その時、エリック王子のもとに執事が駆けつけてきて
アリエルは慌てて海に戻る。

熱帯魚のフランダー(アリエルの友達)はアリエルの姉たちに
「最近アリエルが変」と聞く。
「恋してるんじゃない?」
そう聞いた時のフランダーの反応はキャストによってそれぞれ。
どなただったか思い出せないんだけど、
フランダーは「表向きアリエルの友達だけど本当はアリエルに片思いしているキャラクター」と解釈して演技されている方がいた。
これが一番印象的だった。
(アリエルが恋をしている。でも相手は自分じゃない…。)
その切なさを繊細に表現しながらアリエルを見守ってやらなければならない、と思うフランダー。
この演技すごいと思った。
アニメのフランダーは私にはただの友達に見えたけど、
そんな解釈もあるのか!と目から鱗。
演者の解釈センスが光る。
「アリエルの恋の相手は誰?」
姉妹とフランダーが騒ぐ中、セバスチャンと父トリトンも来る。
セバスチャンは「アリエルは人間の王子に恋をした」と
口を滑らせてしまう。

アリエルの行く秘密の海底にはエリック王子の像があった。
夢を見るようにエリック王子の像を眺めるアリエル。
そこにセバスチャンに連れられてトリトンが来る。
トリトンは魔法で像を破壊する。
泣いて怒るアリエル。
「傷つけるつもりはなかったのに」と苦しむトリトン。

セバスチャンと二人になるアリエル。
「パパは私を愛していない」
「そんなことはないよ」
「本当に愛しているならこんなひどいことはしない」
すれ違う親子の心を上手く描きだす。

アリエルはアースラのところに行ってしまう。
アースラはアリエルに契約書を差し出してサインさせる。
この契約でアリエルはお母さん似の美しい声と引き換えに、
地上を歩くための脚を手に入れた。
アリエルのお母さんは亡くなっている。
だからこそトリトンは妻そっくりの声を持つアリエルを特別に愛していた。
その声を代償にして、アリエルはヒレを脚に変えてしまう。
この契約をとく方法はひとつ。
三日以内に愛する人とキスすることだ。
当然、アースラはこれを阻む気でいる。
浜辺にたどり着いたアリエル。第1幕の終わり。

第2幕。
エリック王子が浜辺でアリエルを発見する。
エリック王子は自分を助けてくれた少女をぼんやり覚えていて、
その子に恋をしていた。
美しい歌声だけが手がかり。
アリエルを見たエリック王子は「もしかして」と思う。
ところがアリエルは声が出ない。
「そうか……。話せないのか(じゃあ歌えないな…)」
残念そうなエリック王子。
アリエルは伝えたい。あなたを助けたのは私です。
でも声が出ない。
エリック王子は思う。
もしかしたらこの子じゃないかと思ったけれど、
声が出ないならあんな美しい歌は歌えるはずがない……。
それでもエリック王子はアリエルをもてなすことにする。

エリック王子はアリエルを興味深く思う。
アリエルと二人で出かける。
良い雰囲気になるけどキスはアースラの手下のウツボに邪魔される。
3日目、ついに二人は心を通じたかに思えた。
ところがその時、美しい歌声が海の方から聞こえる。
アースラが持っているアリエルの声だった。
エリック王子は突然アリエルを離して声の方に走る。
日没が来る。
アリエルは人魚に戻り、アースラのいる海底に引きずり込まれる。

「一生私のものだ!」
喜ぶアースラを前に絶望するアリエル。
そこにトリトンが現れる。
「この子は契約書にサインしたんだ」
契約書を見せるアースラ。
「お前が身代わりになるっていうならアリエルを解放してやってもいい」
アースラの言葉に迷いなくサインするトリトン。
その姿を見てアリエルは本当に父に愛されていることを知る。
自由の身になったアリエルはアースラの水晶玉を奪って海底に叩きつける。
アースラは消えていった。

トリトンと抱き合うアリエル。
「お前には幸せになってほしい。
それなのにどうしても離したくなかった。私が寂しいからだ」
アリエルとの抱擁を解くトリトン。
「彼のもとに行きなさい」
魔法を使ってトリトンはアリエルのヒレを脚に変えた。
(フィリップの石像を破壊したモリでアリエルに脚を与える)
アリエルは両脚で海面へと泳いでいく。

浜辺にはエリックとアリエル。
二人は結婚することになった。
そこにトリトンが現れる。
「アリエル、忘れないで。
お前の聞く潮騒に、光る波間に、私はいる」
出航する船にエリック王子とアリエルがいる。キスをかわした。

ディズニー版は、アリエルとエリック王子の恋愛成就に重点を置ていた。
これはこれでドラマチックなんだけど、
ドラマチックさなら劇団四季版も負けていない。
それに加えてトリトン(父)とアリエル(娘)の和解を濃密に描く。
王子さまに憧れる年齢の女の子には
「王子さまとの結婚」というゴールしか見えない。
しかしそのゴールに向かう過程に父の愛情がある。
この愛情は、実はアリエルの年齢を超えなければ
理解できないものなのかもしれない。

本当に大事に思っているのに、
どうしてもアリエルに伝わらなかったトリトンの愛。
それは、アリエルが窮地に陥った時、
自らの命と引き換えにアリエルを救おうとしたことで伝わる。
アリエルは自分のために命をかけることをいとわないトリトンの姿を見て、
自分を傷つけてばかりの不器用な父が、
本当は深く愛してくれていたと知る。
そしてトリトンは「彼のもとへ行きなさい」とアリエルを手放すのだ。
思いが通じて嬉しい! この先もずっと一緒にいよう! じゃない。
アリエルとの絆を深め、愛しているからこそ、
アリエルのためにトリトンはアリエルを手放す。
アリエルは「ありがとう、パパ!」と叫んでエリック王子のもとへ行く。
それでもトリトンは、ずっとアリエルを愛している。
離れていても親子の愛は続く。
最後の場面でトリトンはアリエルにそう伝えるのだった。

劇団四季「リトル・マーメイド」の最大の魅力。
それは「父と娘の愛情物語」を色濃く出したところにある。
アニメ版でももちろんトリトンの心情は語られるけど、
ここまで濃密ではない。

そして私の大好きな、トリトン役、金久烈さん。(役の幅広すぎ)
トリトンの威厳すごかった。
また絶対観たい。

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