【甘いマスクは、イチゴジャムがお好き】第34話
この日、梓藤は医務室へと顔を出した。人生で二度目だ。
あの榎本という医師は、もう己のことなど覚えていないだろうと思いつつ、受付をしてソファに座って待っていた。すると名を呼ばれたので、診察室へと入る。
「随分とお久しぶりですね、梓藤さん。また誰か亡くなったの?」
「ああ、日常的に誰かは死んでいる。今回は俺の相談ではなくて、診てほしい人間がいて、相談に来たんだ」
「ふぅん。それなら予約を自分で取るのじゃなく、連れてきてくれたらいいのに」
「それが難しいんだ」
「何故?」
「