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vol.49 「金魚すくい」が「フナすくい」に?

毎日暑い、暑すぎます。日中は汗だくになりながら外出し、夜、お風呂から上がったら汗をかき、朝起きたら汗びっしょりなので朝シャンして。でもシャワーから上がったら暑いので、また汗をかく、の繰り返しです。一体いつになったら汗が引くんだ!と思いながら、いよいよ本格的な夏が来たんだなーと楽しんでいます。

夏といったら、夏祭り!私は、夏祭りで食べる焼きそばがすごく好きで、今年もこの時期がやってきたと思うとわくわくします。お祭りの楽しい雰囲気が食べ物をより美味しくさせているのかもしれません。今年も屋台の食べ物を満喫したいです!

夏祭りで色濃く残っている思い出は、小学生の頃、弟が金魚すくいで大きな金魚をゲットしたことです。金魚すくいで泳いでいる金魚の大きさは、4-5センチ程だと思うのですが、弟がすくったのは何と約12センチ!横にも縦にも大きくまるっとした金魚でした。弟がその金魚をすくった時、周りで「あの男の子、大きい金魚持ってる!」と人気者に。弟は誇らしげに金魚を家に持ち帰りました。

夏祭りでみる金魚は、赤・黒色と色鮮やかですが、金魚の祖先は茶色いフナだそうです。人間が金魚を目で見て楽しむため、1700年かけてフナから金魚の姿へと品種改良されました[1]。このことに着目した石橋友也さんは、金魚から元のフナの姿に戻す、《金魚解放運動》(2012年)という作品を発表しました。

石橋さんはどのように金魚をフナに戻したのでしょうか。一言で言うと、”逆”品種改良をしました。品種改良は、近い品種同士をかけ合わせ、ある特徴を持った引き継ぐようにします。”逆”品種改良では、遠い品種の金魚をかけ合わせ、いろんな特徴を持った金魚を誕生させます。そうすることとで、各品種の特徴を中和させることができるそうです[2]。

誕生した金魚からフナの特徴を持っている金魚同士をかけ合わせ、5年間かけて少しずつフナの姿へ戻していきました[1]。また金魚に与える餌も金魚用ではなく、鱒用にしました。金魚用の餌は、金魚の発色をよくする成分が入っており、フナ本来の色に戻すためには、その成分が入っていない餌が必要だからです[2]。《金魚解放運動》の詳細は、動画でみることができます!

私はこの作品を初めて見たとき、衝撃を受けました。一般的に品種改良は、良い特徴を引き出すために使われている技術で、改良されたものが”良い”ことだと思い込んでいました。ですが、それはあくまでも人間の観点からみた”良い”特徴で、品種改良は私たちのエゴに過ぎない可能性があることに気付くことができた作品でした。”逆”品種改良で金魚を人間から「解放」していく《金魚解放運動》は、1700年かけた金魚の品種改良に対し、疑問を投げかけており、少し皮肉的な取り組みが印象的でした。

もしフナが現在の金魚の姿に品種改良されていなかったら、夏祭りには「金魚すくい」は存在していないのかもしれません。金魚すくいの代わりとして「フナすくい」になっていたのか、「スーパーボールすくい」がメジャーとなっているのか…どんな屋台になっていたのでしょうか。

引用:
[1]”金魚解放運動”. TOMOYA ISHIBASHI. https://www.shibashiishibashi.com/kingyo, (参照 2024-07-21).
[2] Tomoya Ishibashi, “金魚解放運動(日本語字幕)”, 2013.09.12., video, 02:51, https://www.youtube.com/watch?v=jxHg5Hmd0zo&t=195s, (参照 2024-07-21).
参考文献:
[3] “第18回 アート部門 審査委員会推薦作品 金魚解放運動”. 文化庁メディア芸術祭.
https://j-mediaarts.jp/award/single/goldfish_liberation_movement/index.html, (参照 2024-07-21).

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