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夏の初めの夜の風

今日の切れ目から忍び込み、そわりと体表を撫ぜてく初夏の夜風は思わぬセンチメントを連れてくる。

わたしはずっと嘘つきでした。わたしはずっと良い子でした。わたしはずっと悪い子でした。

嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘。嘘ばかりをついてきたから、嘘嘘嘘のゲシュタルト崩壊。

泣きたいときに泣けないで、泣きたくないのに泣いてばかりのまぶたを腫らして、あの子ばっかり羨ましくて、どこにも行きたい場所はないけどぜんぶを脱いでどっか行きたい。

最終電車で向かう都会は馬鹿みたいに楽しくて、数時間後にはほどける夜を全身に絡めてはしゃいだ。

つよがりも恥ずかしいも痛々しいも大人になって今はもう、夏の初めの夜の風。

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