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詩の授業が好きだった

小学生のころ、国語の授業で詩を知った。ほんの数行の中に世界があって、うつくしいリズムがあって、いつまでも読んでいたい。詩の授業が好きだった。

トントン、タンタン、トタタン、タタトン。

屋根で跳ねる音が見える。もじもじ、テカテカ、ぐるんぐるん。聞こえない音まで文字に擬態する。

普段当たり前に使う言葉の、あっちとこっちを繋ぎ合わせて並びを変えて、切り取る角度を少し変えれば、ほんの些細な景色や気づきや感情も、詩としてみずみずしく立ち上がる。

斬新ですてきな比喩に出逢えばため息がでる。隠喩だとなおおしゃれ。隠喩って言葉自体がなんだか秘密めいていて奥ゆかしい。

擬人法はかわいい。椅子にも色にも思い出にも、何にだって命を宿す。体言止めって意思が強そう。でもちょっと、ナルシストっぽい。倒置法は大人っぽい。肝心なことはちょっと遅れてついてくる。安易に使うと忘れてきそう。一連と二連と三連の、ライバル関係もおもしろい。みんなちがって、みんないい。

言葉はすごい。凶器にもなるし詩にもなる。それだけで、どこまでも遠くのだれかを殺すことも、温めることもできる。

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